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日中韓首脳会談  信頼醸成し地域安定へ

 日中韓首脳会談が東京で開かれた。およそ7年間、途絶えていた中国首脳と韓国大統領の来日である。
 地理的にも歴史文化的にも日本と近しいだけに、この間の外交関係の不正常さにあらためて思い至る。尖閣・竹島問題や歴史認識を焦点化して溝を深める流れに区切りをつけ、互いに新たな関係の構築へと踏み出したい。
 3カ国を引き寄せたのは、言うまでもなく北朝鮮の核問題だ。南北の平和定着は北東アジアの共通利益である。拉致問題を抱える日本としては、日朝対話の実現を探る意味でも、中韓との関係改善は重要といえる。
 会談で安倍晋三首相、中国の李克強首相、韓国の文在寅大統領は4月の南北「板門店宣言」の意義を共有し、6月上旬までに開催が見込まれる史上初の米朝首脳会談に向けて連携を確認した。日中韓の自由貿易協定(FTA)交渉を加速することでも一致した。
 一方、7~8日の金正恩朝鮮労働党委員長の2度目の電撃訪中、9日のポンペオ米国務長官の再訪朝と、米朝の動きも活発化している。双方の駆け引きが激しくなっている証しだろう。
 非核化プロセスに関して、検証を伴う形での短期間の核放棄を目指す米国・日韓に対し、中国は段階的な措置と見返りが必要だとする北朝鮮の立場に近い。きのうの共同記者発表で、3首脳はこの点の温度差には触れなかった。
 韓国主導の形で進みつつある南北、米朝の対話の流れに、中国がどう影響力を及ぼそうとしているかは見通し難い。ただ、貿易や海洋秩序をめぐって対立する米国を、「北朝鮮カード」でけん制する狙いがあるのは確かだろう。
 米朝首脳会談が予定通り行われ、非核化に合意したとしても、その実行と検証は長期に及ぶ。過去に頓挫した例を繰り返さないためには、関係国の相互信頼の醸成が前提となる。
 共通利益と未来志向を確認し合う場として、年1回の日中韓首脳会談の持ち回り開催を定着させたい。日中で合意した経済協力案件を含め、今回の成果を、次の会談や2国間の首脳往来へ確実につなげたい。
 日中は、懸案だった偶発的衝突回避の「海空連絡メカニズム」の6月始動でも合意した。近隣国との関係改善に動きだした習近平指導部だが、覇権主義的な路線を転換したわけではない。日本には、中国に自制を促す役割もある。

[京都新聞 2018年05月10日掲載]

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