社説 京都新聞トップへ

財務省の処分  麻生氏は進退の決断を

 森友学園をめぐる文書改ざんや交渉記録廃棄などについて、財務省が内部調査の報告書を公表し、関係した職員20人を処分した。
 当時理財局長だった佐川宣寿前国税庁長官が文書改ざんの方向性を決定づけたとして最も重い停職3カ月相当とした。当時の事務次官も減給処分となった。監督責任を重くみたということだろう。
 麻生太郎財務相は閣僚給与1年分を自主返納するが、辞任はしないという。最高責任者である麻生氏の監督責任は問われないのだろうか。疑問の残る判断である。
 一連の問題は、改ざんした決裁文書を平然と国会に提出し、国民の代表である国会議員を欺いた前代未聞の不祥事である。
 関わった職員は深く反省すべきだが、そうした行為を許した政治の責任も見逃すことはできない。
 佐川氏が国会で「廃棄した」と説明したはずの資料が次々に見つかり、その度に審議は混乱した。
 麻生氏も佐川氏と同様、「記録は残っていない」などと事実と異なる答弁を11回行った。改ざんについても「悪質なものではない」と軽視するかのような発言を繰り返し、批判を浴びた。自らも混乱に拍車をかけていたといえる。
 佐川氏らが処分されたことで、麻生氏の言動の不適切さがあらためて明確になった。
 部下には懲戒処分も含めた責任をとらせながら、自らはトップの座に居続けることに説明がつくだろうか。安倍晋三首相は「責任を全うしてもらいたい」と続投を求めたが、もはや自ら出処進退を決断する以外に責任を全うする道はないのではないか。
 報告書は、官僚と政権の関わりにも言及している。佐川氏は部下が作成した原案を基に最終的な改ざん部分を決めていた。首相夫人や政治家に関する記述のほか、「本件の特殊性」などの表現を削除していたという。
 記録廃棄は、安倍首相が夫妻の関与を全面否定した昨年2月の国会答弁がきっかけだともしている。首相への「忖度(そんたく)」をうかがわせる部分だ。夫妻の関与が本当になかったかどうか、引き続き国会での真相解明が必要だ。
 森友問題は、財務省に対する国民の信頼を失墜させた。来秋に予定される消費税増税への対応や財政再建など重要な政策課題にも影響を与えることになろう。
 官僚に責任をかぶせて逃げ切ろうとする政権の体質への不信感も増幅した。処分を理由に幕引きすることは許されない。

[京都新聞 2018年06月05日掲載]

バックナンバー
 
著作権は京都新聞社に帰属します。
ネットワーク上の著作権について(日本新聞協会)