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参院定数自民案  小手先の変更にすぎぬ

 ご都合主義の選挙区定数変更案と言われても仕方ない。
 自民党が来夏の参院選に向け、新たな公選法改正案を了承した。
 選挙区の「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区を維持しながら、比例代表と合わせて定数を6増やす内容で、今国会への提出、成立を目指すという。
 有権者が多い埼玉選挙区の定数を2増して「1票の格差」を3倍以内に抑える。比例代表ではあらかじめ決めた順位に従って当選者を決める「拘束名簿式」の特定枠を設ける。同党は、合区で擁立できなかった県の候補者を特定枠に登載して救済する方針だという。
 参院の役割やあるべき選挙制度の議論をなおざりにしたままの小手先の変更としか思えない。国民の理解は得られまい。
 選挙区の定数を増やしても依然として3倍もの格差が残る。比例代表に導入する特定枠は現行の「非拘束名簿式」と理念が異なるだけに、整合性について説明が求められよう。議員救済だけが目的なら党内から批判も出かねない。
 木に竹を接ぐような変更は、選挙制度をゆがめるだけだ。
 参院選挙区の1票の格差をめぐっては、最高裁が2013年参院選の4・77倍を「違憲状態」とした。これを受けて15年7月、合区を含む公選法改正がなされた。だが自民党は、安倍晋三首相肝いりの憲法改正案に都道府県単位で1人以上選出できる案を潜り込ませ、改憲で合区をなくそうとした。
 その改憲案の国会提出が困難と見るや、今回の変更案が出てきた。同党幹部は「来年の参院選が迫っており、結論を出さなければならない」と言うが、今国会の会期は20日までだ。十分な審議を前提にしているとは思えない。
 国会では森友・加計疑惑の真相解明もできていない。そんな状態で、自分たちの生き残り策につながる法案の成立を急ぐことは許されない。党内からも「国民にどう映るかが心配だ。なめてはいけない」(小泉進次郎筆頭副幹事長)と懸念の声も出ている。
 15年の法改正は付則で、19年の参院選に向けた抜本的な見直しを「引き続き検討し、必ず結論を得る」と定めている。制度改革は国会全体に向けられた課題である。しかし、野党側も積極的に議論してきたとは言い難い。
 自民案にある定数増は野党にも有利に働く面があるが、安易に乗ってはいけない。民主主義の根幹に関わる選挙制度改革は中途半端なものであってはならない。

[京都新聞 2018年06月08日掲載]

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