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受動喫煙防止  東京にけん引役を期待

 東京五輪・パラリンピックを見据え、東京都が制定を目指してきた受動喫煙防止条例が都議会で成立した。政府の健康増進法改正案よりも厳しい内容だ。
 国際オリンピック委員会(IOC)と世界保健機関(WHO)は2010年に「たばこのない五輪」の実現で合意し、以来、開催国・都市は厳しい受動喫煙対策を実現している。
 日本の対策は世界で「最低レベル」と批判されており、都が国任せにせず、率先して厳しい規制に踏み出した意味は大きい。全面施行される20年4月に向け、実効性のある条例にしてもらいたい。
 都条例は、従業員を雇う飲食店について店舗面積に関係なく原則屋内禁煙としたのが特徴だ。喫煙するには飲食できない専用室を設ける必要があり、従業員がいなければ禁煙、喫煙のいずれかを選べる。違反者には5万円以下の過料が適用され、規制対象の飲食店は84%、13万軒ほどになるという。
 一方、国会で審議中の健康増進法改正案は、自民党が中小の飲食店に配慮して抵抗し、当初案から大きく後退した。資本金5千万円以下で客室面積100平方メートル以下の既存店は、店頭に「喫煙可」などの表示を行えば、店全体が喫煙可能となり、規制対象は全国の飲食店の45%ほどにとどまる。
 都条例に対しては、中小飲食店から「商売が成り立たない」といった声が出ているが、禁煙で飲食店の客が減ることはないという米国の研究所の調査もある。
 むしろ全面禁煙する方がプラスになると考える事業者も増えており、都は受動喫煙対策の意義を丁寧に説明し、理解を広める必要があろう。
 実効性を高めるには、飲食店に立ち入り検査し、指導する各地の保健所の体制強化が欠かせない。加えて、規制強化によって逆に歩きたばこなどの路上喫煙が増えないよう、屋外公衆喫煙所の設置を増やすことなども必要だろう。
 たばこによる健康被害は科学的に実証されており、日本では、受動喫煙で毎年1万5千人が亡くなっているという厚生労働省の試算もある。五輪・パラリンピックを、日本の受動喫煙対策を考え直す機会にしなければならない。
 公共の場所全てを屋内全面禁煙にしている国は、既に55カ国に及ぶ。都条例が国内の取り組みを国際標準へと近づけるけん引役となり、受動喫煙防止の意識が国民の間に広く定着していくことを期待したい。

[京都新聞 2018年06月30日掲載]

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