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タイ洞窟遭難  少年ら救出より安全に

 タイ北部チェンライ県の洞窟で行方不明になっていた地元サッカーチームの少年ら13人の生存が、閉じ込められてから10日目になって、ようやく確認された。
 雨期を迎えて洞窟内の水位が上昇し、戻れなくなったのだろうが、水や食料は持っていないとみられていた。奇跡的に全員、命に別条はなかった。捜索を見守っていた家族らは、さぞ安心していよう。
 現場は、チェンライ郊外にあるタムルアン洞窟で、全長が約10キロもあるとされている。11~16歳のサッカーチームの少年12人と、25歳のコーチが、先月23日から行方不明となった。
 発見されたのは、入り口から5キロ程度も奥の場所だった。
 詳しい経緯は今後明らかになるだろうが、少年らは、幼い頃からの遊び場である洞窟に入ったものの、濁流などに直面し、現場に避難したと考えられる。
 慣れ親しんだところでも、気象が激変すれば、どのような危険が待っているか分からない。肝に銘じておくべきだろう。
 避難先には、乾いた安全な場所を選んだようだ。
 発見されて空腹を訴えた少年らだが、コーチから横になってできるだけ体力を使わず、洞窟から垂れるきれいな水だけを飲むよう指示され、救出を待っていた。
 現場の地形やサバイバルに関する知識を共有したことが、身を守ったといえるのではないか。
 生存が確認された少年らであるが、遭難した洞窟から脱出できたわけではない。
 タイ海軍特殊部隊をはじめ、外国からダイビングなどの専門家らが駆け付けて捜索に当たったが、現場は泥水が激流となって行く手を阻み、少年らの発見までに時間を要した。
 救助当局は、少年らの健康状態を確認しながら、ダイビングの基本動作を身につけさせて脱出させることも、検討している。
 とはいえ、現地では豪雨も予想され、再び水が洞窟内に浸入する恐れがある。排水作業を急ピッチで進めてリスクを軽減するとともに、より安全な脱出方法があるのなら、そちらを選んでもよいのではないか。
 ここまで、勇気を持って生き延びた少年らである。万全の救出活動をもって、無事に生還させてあげたい。
 タイだけでなく日本でも、台風の影響で大気の不安定な状態が続いている。川の増水、氾濫など水の災害に十分な警戒が必要だ。

[京都新聞 2018年07月05日掲載]

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