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虐待緊急対策  総掛かりで悲劇防ごう

 痛ましい悲劇を繰り返してはならない。総掛かりで早急に取り組む必要がある。
 東京都目黒区で両親から虐待されていた船戸結愛ちゃん=当時(5)=が亡くなった事件を受けて、政府は児童虐待防止の緊急対策をまとめた。
 対策の柱は、児童相談所(児相)で働く児童福祉司の約2千人増員だ。今の約3200人が2022年度までに1・6倍の5200人になる。
 児相のマンパワーは慢性的に足りず、現場は疲弊している。人材確保は簡単ではないが、絵に描いた餅にならないように児相の体制を強化したい。
 児童虐待の通告件数は年々増えており、最近は事案内容も複雑化している。ただ、児童福祉司が多様な事例に対して的確に判断できるようになるには5年以上の実務経験が必要といわれる。
 16年の児相強化プランで増員策が打ち出されたこともあり、現場では勤務3年未満の職員が全体の4割を占めるという。今回の約2千人増員で経験の浅い職員はさらに増える見込みだ。
 人材の早期育成や組織力向上が問われる。そのために研修内容を工夫し、実践的な対応力を強めることが必要だ。
 今回の事件では家族が転居した際に、児相間で情報が共有されなかった。反省を踏まえ、緊急性が高い事案の場合は児相の職員同士の対面引き継ぎを原則にした。
 家庭訪問で保護者が面会を拒否した場合も「原則48時間以内に安全確認する」との指針に加え、確認できない場合は立ち入り調査を実施し、警察と情報共有を進めることをルール化した。
 警察への情報提供については「親族が情報共有を嫌がり、通報が減る」など慎重な意見もあるが、増え続ける児童虐待に児相だけで対応するには限界がある。
 保育や教育行政など市区町村との役割分担が必要だ。警察との連携強化やコミュニケーションも求められる。
 各市町村にある子育て世代包括支援センターや児童養護施設、NPOなどの民間団体は家族に関するさまざまな情報を持つ。連携を強めれば児相の負担も減らせる。重層的な地域ぐるみのセーフティーネットの構築を急ぐべきだ。
 児童虐待対策に即効薬はない。対症療法的かもしれないが、国や自治体は必要と思われることは全てやってほしい。尊い命を失ってから対策に乗りだすようなことはもう終わりにしたい。

[京都新聞 2018年07月26日掲載]

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