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衆院議長所感  緊張感取り戻す契機に

 国権の最高機関の長である衆院議長の提言は、安倍晋三首相や国会議員にどう聞こえるのだろう。
 大島理森衆院議長が、相次ぐ不祥事に揺れた通常国会について、異例の所感を公表した。
 森友問題をめぐる財務省の決裁文書改ざん、陸上自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)などを挙げ、「民主主義の根幹を揺るがす」「立法府の判断を誤らせるおそれがある」とした。
 特に安倍政権に対しては、問題を起こした経緯や原因の究明と再発防止への制度づくりを求めた。
 大島氏の指摘は、行政府が立法府を欺いた前代未聞の不祥事への危機感といえる。安倍政権は深刻に受け止める必要がある。
 とりわけ、経緯や原因の究明については、問題に真摯(しんし)に向き合う意思があるかどうかの試金石といえよう。逃げずに実行すべきだ。
 ただ、国会が終わった今ごろになって議長が所感を示したことには疑問も残る。問題が明るみに出た段階で機動的に乗り出していれば、その後の国会運営も違った展開になったのではないか。
 参院では参院定数6増法案などに関し、野党が伊達忠一議長の不信任案を提出する一幕があった。
 仲介役を期待されながら調整に動かなかった伊達氏の姿勢には「自民党いいなり」と厳しい声が上がり、与党の議長経験者からも「努力不足」の苦言が出た。
 議長が出身政党の意向に気兼ねして議事運営が不公平と見なされるようでは、言論の府である国会議員を束ねる役割は果たせない。責任と誇りを持ち、リーダーシップを取るべきだった。
 今後の国会の在り方について、大島氏は「正当かつ強力な調査権の活用」に言及した。具体的には40人以上の国会議員の要請で衆院調査局に調査を求めることができる「予備的調査」を例示し、国会の調査機能充実を求めた。
 予備的調査は、国政調査権に基づく調査と違って強制力が伴わないが、官公庁に資料提出などの協力を求め、拒否された場合はその理由を述べさせることができる。
 限界はあるが、工夫次第では少数会派にとっても疑惑追及の重要な武器になりそうだ。こうした方法を駆使し、行政府と立法府の間に緊張感を取り戻したい。
 個々の議員も自覚が必要だ。特に与党議員は、所属政党の決定に唯々諾々と従い、審議を軽視している面はないだろうか。
 多様な問題を提起し、論じ合うことこそ、国民の代表である議員の本分とわきまえてほしい。

[京都新聞 2018年08月02日掲載]

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