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豊洲の安全宣言  継続的な監視欠かせぬ

 築地市場(東京都中央区)から移転する豊洲市場(江東区)について小池百合子東京都知事が「都民や市場関係者に、豊洲市場は安全であり、安心して利用していただけると伝えたい」と安全宣言した。農相の認可を受け、10月11日に開場する見通しだ。
 建物下の盛り土が行われず、有害物質の検出もあって、市場の移転は当初の予定から2年近くずれ込むことになった。信頼回復のためには、これからも安全性を確認する作業を欠かしてはならない。
 豊洲の敷地は東京ガスの工場跡地で、土壌汚染対策を検討した都の専門家会議は敷地全体で土壌を入れ替え、その上に盛り土をするよう提言していた。ところが、小池知事が2016年8月に移転延期を表明した直後、都が盛り土をせずに地下空間としていたことが発覚した。
 さらに問題となったのは、敷地内の地下水から飲み水の環境基準の100倍を超える有害物質ベンゼンが検出されたことだ。生鮮食品を扱う市場関係者から不安視する声が上がったのは当然といえよう。
 都は専門家会議の提言に基づいて昨年12月から、揮発性の有害物質の侵入を防ぐため、地下空間の床をコンクリートで覆い、換気設備を設けるなどの追加対策工事を進めてきた。先月には専門家会議が「安全性が確保されたことを確認した」との評価を公表し、これを受けて小池知事が宣言した形だ。
 しかし、会議座長の平田健正放送大和歌山学習センター所長がベンゼンの検出について「最終的には基準を下回ると信じているが、5年10年で考えていく必要がある」と指摘しているように、長期的な視点で豊洲の地下水や空気をしっかりと監視していくことがきわめて重要だ。
 豊洲市場へは築地市場と同様に全国各地から水産物や農産物が出荷され、国内外の観光客が多く訪れるスポットとしても注目されている。新たな風評被害を生み出さないために、監視結果は広く情報開示してほしい。
 移転の延期に伴い、築地跡地を通って都心と臨海部を結ぶ東京五輪のアクセス道路は工事が遅れ、このままでは混雑に拍車がかかる事態が懸念される。豊洲で整備予定の観光拠点「千客万来施設」は着工が20年の五輪後となった。小池知事はこれらの影響についても説明を尽くし、必要な対策を講じてもらいたい。

[京都新聞 2018年08月20日掲載]

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