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福島原発浄化水  「残留物」の徹底点検を

 政府や東京電力への不信感がまたしても増幅しかねない。
 福島第1原発で汚染水を浄化した後に残る放射性物質トリチウムを含んだ水に、法令基準を上回るヨウ素129など他の放射性物質が残留していることが分かった。
 政府は、トリチウムは人体への影響が小さいなどとして、希釈して海洋放出する処分を有力な選択肢としている。東電もこれまで「トリチウム以外は除去できている」と強調してきた。残留する放射性物質があるなら、海洋放出の前提に疑問符がついたことになる。
 希釈により残留する放射性物質も基準値以下に薄まるとみられるが、風評被害を懸念する地元漁業者は簡単に納得できないだろう。
 本当に害はないのか、安全性をどう担保するか。これまで以上に丁寧な説明が必要だ。
 東電によると、残留していたヨウ素129は半減期が約1570万年で、1リットル当たり最大62・2ベクレル(基準は同9ベクレル)検出された。
 福島第1原発では事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)を冷やすための注水を続けており、デブリに触れた水が増加している。浄化水は現時点で約92万トン、タンクは約680基に達し、あと2~3年で保管する敷地がなくなるという。
 トリチウムは他の原発では薄めて海に放出しているが、福島第1原発では風評被害を考慮してタンクに保管している。
 政府は、これらのタンクを撤去し、原発内にある使用済み核燃料を保管する設備やデブリ取り出しの作業エリアを設ける予定で、浄化水の海洋放出や地下埋設など五つの案からの絞り込みに向けた議論を続けている。月末には地元などで公聴会も開くというが、理解を得るのは簡単ではなかろう。
 大きな問題として、これまでトリチウム以外の放射性物質の存在がほとんど知らされていなかったことがある。トリチウム以外は除去できているはずの水に、なぜ放射性物質が残っていたのか。納得できる根拠を示してほしい。
 過去には、除去装置の性能が安定していなかった時期もあり、現在より放射性物質の濃度が高かった可能性もあるとみられる。しかし東電は、約680あるタンクごとの濃度は「調べていない」としている。風評被害を避けるには、徹底した点検が必要ではないか。
 地元の理解が得られないまま海洋放出などの処分を進めるべきではない。廃炉に向けた今後の作業を円滑に進めるためにも、誠意ある慎重な対応が不可欠だ。

[京都新聞 2018年08月21日掲載]

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