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伊の高架橋崩落  厳しい警告は日本にも

 43人が亡くなったイタリア北部ジェノバの高架橋崩落事故。あすで発生から10日になるが、欧米の国々はニュースで大きく伝えている。
 イタリアと同じ課題を抱え、恐れていたことが起きたと深刻に受け止めているからだ。もちろん、日本もよそごとではない。
 イタリア政府は、橋の点検や補修が不十分だったとして、管理会社の責任を追及する構えだ。崩落した高速道路の高架橋は1967年建設。同じ頃に多くの橋や道路が造られており、老朽化で崩落の危険があるのは3万カ所に上る。
 地元の専門家から高架橋の設計・構造の問題が指摘され、警告も出ていた。財源難があったにせよ、崩落を防げなかった責任は、問題を放置してきた政治や行政にもある。どの国でも同じことだ。
 「最後の警告」を、日本の国土交通省審議会が発している。2014年に出した「提言」の中で、「今すぐ本格的なメンテナンスにかじを切れ」と危機感をあらわにした。
 警告は以前から繰り返し出されていたのに、12年に起きた中央自動車道笹子トンネル天井板落下事故で9人が犠牲になった。
 笹子事故の損害賠償裁判で、一審判決は点検水準が低すぎると踏み込み、抜本的な強化を求めた。道路法改正や政・省令などで、点検方法を「遠望目視」から「近接目視」に改めるなど対策は取られたが、十分と言えるのか。
 全国約73万の橋のうち7割以上が市町村道にあり、建設から50年経過した橋は2割超、10年後には半数近くになる。すでに老朽化で通行規制になった橋が2500を超えている。
 さらに深刻なのは、橋の保全に携わる土木技師がいない町が約3割、村で約6割もあることだ。これを補うために、都道府県が点検・診断の発注事務を一括して実施している。活用数は増えているものの16年度で3割強にとどまる。
 橋の点検は16年度までの3年間で5割超を実施、危険性の高い橋の2割は撤去・廃止された。しかし、予防措置が必要とされた橋の修繕はほとんど進んでいない。
 高度成長から半世紀。道路や橋は老朽化に加えて、これまでにない災害に見舞われている。限られた財源の中で将来を見通し、生活に欠かせないインフラを選別し、直しながら守っていく。そのための予算と人材育成にもっと目を向ける必要がある。警告をしっかりと受け止めないといけない。

[京都新聞 2018年08月23日掲載]

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