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防衛白書  脅威強調だけでいいか

 2018年版防衛白書が公表された。6月の米朝首脳会談後も北朝鮮の核・ミサイルの脅威は変わらず続いていると警戒感を示している。
 共同声明で非核化の意思が示されたことに「意義は大きい」と評価しながらも、「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」と明記した。昨年の白書より表現が強まっている。
 たしかに北朝鮮の非核化の動きは進んでおらず、脅威がなくなったわけではない。しかし、ことさら強調するのは緊張緩和の流れに水を差すようでもあり、強い違和感を覚える。
 背景にあるのは、政府が23年度の運用開始を目指す地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」ではないか。
 北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対応するため導入が決まったが、1基あたりの取得経費が当初の約800億円から約1340億円と大きく膨らみ、費用対効果などから疑問の声が上がっている。
 導入を円滑に進めるための脅威の強調だとすれば、本末転倒と言わざるをえない。
 米朝会談後に菅義偉官房長官は「安全保障上の厳しい状況は緩和された」と会見で述べた。
 日本海でのイージス艦の常時配置などをやめ、住民避難訓練は中止となった。そうした対応とも明らかに矛盾する。
 しかし政府は、白書を踏まえミサイル防衛を強化する構えだ。
 小野寺五典防衛相は「方向性を国民に知ってもらう必要がある」と白書の意義を強調するが、これで理解が得られるだろうか。
 一方で、十分とは言えないのが南スーダンやイラクの日報問題についての記述だ。文民統制(シビリアンコントロール)の在り方が批判されたが、昨年の白書では触れられなかった。
 今年は巻末に項目を設けているが、経緯や再発防止の取り組みについて大まかな説明にとどまっている。同じく文民統制が問われた幹部自衛官による国会議員への暴言問題には触れていない。
 防衛費(当初予算ベース)は安倍政権下で13年度に増加に転じており、19年度予算の概算要求額も過去最大となる見込みだ。防衛に関する国民への説明責任はより重くなっている。
 文民統制の徹底についてもきちんと示すべきだろう。脅威をあおる内容ばかりが目立つ白書では、その役割は果たせていないのではないか。

[京都新聞 2018年08月30日掲載]

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