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沖縄県知事選  「移設」の是非を明確に

 知事選ではあるが、国の政策の是非が問われる選挙となろう。
 沖縄県知事選(9月30日投開票)で、今月8日に死去した翁長雄志前知事の後継者として自由党の玉城デニー衆院議員が野党5党派の支援を受ける形で立候補を正式に表明した。前宜野湾市長の佐喜真淳氏も自民、公明両党の推薦を得て出馬表明している。
 佐喜真、玉城両氏の事実上の一騎打ちとなる見通しだ。
 最大の争点は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題だ。だが、玉城氏が移設阻止を「貫徹する」との立場を示したのに対し、佐喜真氏は公明との政策協定でも移設の是非には触れなかった。
 争点化しないことが戦術なのかもしれない。だが、沖縄にとって最も重要な移設問題への立場を示さないことは、移設を容認する人も含めた有権者の判断材料を奪うことにならないだろうか。
 2月の名護市長選でも、自民などが推して当選した市長は移設問題を争点から外し、公開討論の呼びかけにも応じなかった。
 知事選も同じような方法で争点をぼかすのなら、不誠実のそしりを免れまい。
 玉城氏も、移設に反対する主張の先にどのような地域づくりのビジョンを描くのか、具体的に語る必要がある。
 辺野古を巡っては、翁長氏が表明した海の埋め立て承認撤回を実施するかどうかの局面にある。
 選挙で問われるのは辺野古問題だけではないが、移設に関する見解と対応策を明確にし、骨太の議論を戦わせるべきではないか。
 今知事選には、安倍晋三政権の思惑が色濃く投影されている。
 自民党は今年の運動方針に「沖縄県知事選に勝利し、県政奪還を実現する」と明記した。名護市長選のほか、自衛隊部隊配備計画が争点になった3月の石垣市長選でも支援した候補者を当選させた。
 辺野古移設は安全保障政策の根幹に関わる問題だけに、国政政党の対立構図が反映されやすい。だが、基地問題は本来、沖縄との対話を重ねながら、国政の場で十分論じられなければならない。
 それが沖縄では、地域行政の担い手を選ぶ首長選に、国論を二分する安全保障に関する重い判断を担わせている。
 選挙で決着をつけようとしても、十分な議論がなければ対立と分断が残るだけだ。佐喜真、玉城両氏はその点をよく認識し、実りある政策論議につなげてほしい。

[京都新聞 2018年08月30日掲載]

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