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安保法施行3年  懸念拭えぬ「なし崩し」

 安全保障関連法の施行から、きのうで3年となった。
 憲法解釈変更により集団的自衛権行使に道を開き、自衛隊の任務や活動範囲が格段に広がった。日米の軍事一体化も加速している。安倍晋三政権は実績づくりに前のめりだが、憲法が定める武力行使の「縛り」を忘れてはならない。
 米国などが他国から攻撃を受けた際、安保法に基づき政府が「存立危機事態」と認定すれば、集団的自衛権行使が可能になった。まさに戦後日本の安全保障政策を大きく転換させたと言える。
 この3年、政府は日米同盟の強化を強調してきた。実際に米軍の艦艇や航空機などを守る「武器等防護」は、昨年1年間で16件実施され、前年の2件から急増した。
 ところが防衛省は対米支援任務の詳細な実施状況を明らかにしていない。国民の目が届かないところで、米軍との一体化が着々と進んでいる。危惧を禁じ得ない。
 安保法は国連が統括していない軍事的活動も「国際連携平和安全活動」と定め、条件を満たせば自衛隊派遣を認める。政府はこれを初適用し4月からイスラエル、エジプト両軍の停戦監視活動をする「多国籍軍・監視団」(MFO)へ自衛隊員2人を派遣する。
 自衛隊の任務として可能になった海外の邦人救出や警護活動にもオスプレイなどの専用航空機を導入する方針という。自衛隊の任務や海外派遣がなし崩し的に拡大されていく背景には、安保法の既成事実化を急ぎたいという安倍政権の強い意向があるとみられる。
 だが新たな任務付与に伴って自衛隊が戦闘に巻き込まれるリスクは増大する。隊員の生命、安全を最優先に考える必要がある。
 政府は昨年12月、法施行後初めて防衛力整備の指針を閣議決定、「打撃力」拡大を明記した。ヘリコプター搭載型護衛艦を改修する事実上の空母化や、敵基地攻撃能力の保有につながる長距離巡航ミサイルの導入などを打ち出した。
 打撃力増強は、「専守防衛」のたがを緩め、形骸化させる恐れがある。まして防衛費の増額は第2次安倍政権発足以降7年連続だ。中国など周辺国の不信感を増幅し、軍拡競争を招きかねない。
 そもそも安保法は、多くの憲法学者が「違憲」の疑いを指摘する中、与党の数の力で強引に可決された。いまだ安保法への国民の理解が深まったとは言い難い。日本の安全にはどんな備えが必要か、国際平和にどう貢献すべきか、原点に立ち返った議論が要る。

[京都新聞 2019年03月30日掲載]

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