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エース登板せず  大会の在り方見直しを

 高校野球の在り方に一石を投じたのは間違いない。
 全国高校野球選手権岩手大会の決勝で、大船渡の監督は3年の佐々木朗希投手の登板を回避し、花巻東に大差で敗れた。
 最速163キロの速球で注目され「令和の怪物」とも呼ばれる超高校級の投手だ。前日の準決勝で129球を投げて完封していた。
 故障の防止が理由である。監督は、試合間隔や気温の高さなどを要因に挙げて「今までの3年間の中で一番壊れる可能性が高い」と思ったという。
 がっかりしたファンも多いだろう。なぜ登板させなかったのかとの批判が寄せられたが、英断とたたえる声も多いようだ。
 佐々木投手は「投げたいという気持ちはあった」と複雑な心境を吐露した。甲子園という夢と、将来を考えた起用法を両立させる難しさが浮き彫りになった。
 それでも、選手の健康を第一とした監督の判断を尊重したい。
 高校球界では、投手を故障から守ろうという意識が年々高まっている。昨年12月には新潟県高野連が春季新潟大会で投球数制限の導入を表明した。
 後に見送りとなったが、その流れを受けて日本高野連は今年4月に有識者会議を発足させた。
 全国大会を対象に一定の日数の中で投げられる球数の制限を答申することが決まり、9月には具体的な日数や制限数が検討される。
 小幅ながら球数制限に踏み出したことは評価できる。あくまで選手本位の視点で、ルールづくりに知恵を出してほしい。
 日程にも改善の余地があるのではないか。全国大会開幕に備え、高野連は地方大会の期日を「7月末日までに必ず代表校が決まるように日程を組む」と定める。
 佐々木投手は9日間で4試合435球を投げていた。
 各地方大会は期末試験が終わる7月10日前後から始まるのが一般的だが、開幕を繰り上げるなど余裕を持たせることが必要だ。
 傑出した一人のエースが強豪校を次々と倒す―。そんなドラマが高校野球の魅力となってきた。
 延長17回、250球を投げ抜いた「平成の怪物」松坂大輔投手を思い出す方も多いだろう。昨夏の大会でも秋田・金足農の吉田輝星投手が注目を集めた。
 だが「甲子園が全て」というわけではなく、選手の酷使は避けるべきだ。故障を防ぐ大会運営の在り方について、社会的な合意をどうつくるかが問われる。

[京都新聞 2019年08月02日掲載]

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