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文科次官辞任  組織の立て直しが急務

 文部科学省を巡る贈収賄事件の責任をとって戸谷一夫事務次官がきのう辞任した。
 不祥事で事務方トップが2代続けて引責辞任することになる。教育行政への信頼は地に落ちた。組織の解体的出直しが急務だ。
 林芳正文科相は戸谷氏ら幹部3人を減給の懲戒処分とした。贈賄側の業者との不適切な関係などがその理由だ。うち2人が辞任した。
 林氏は会見で謝罪したが、自らの早期の辞任は否定した。とはいえ政治責任は重大だ。何らかのけじめが要る。
 事件は今年7月に発覚した。前科学技術・学術政策局長と前国際統括官の2人が受託収賄罪などで、それぞれ逮捕・起訴された。同省は有識者による調査・検証チームを設置し、全職員を対象に業者からの飲食接待や金銭贈与などについて調査を進めていた。
 一連の事件に関与していたのは、同じ元コンサルタント会社役員だった。戸谷氏はこの元役員が設けた会食の場に同席していた。
 文科省では昨年、組織的な天下り問題に関係したとして計43人が処分された。引責辞任した前次官の後任として、戸谷氏は不祥事の再発防止を担う重い立場だった。
 それなのに不適切な接待を受けていた。認識の甘さを認めたが、軽率な行動と言わざるをえない。
 今回の事件を通して浮かび上がるのは、利権を狙い高級官僚に近づくブローカーと、その暗躍を許す文科省内の構造的な問題だ。
 同省は宇宙開発を抱える科学技術分野や大学などの補助事業分野で巨額のカネが動き、許認可権も多い。官僚側の規律意識の低さも手伝い、便宜供与を期待して接待などが繰り返されていた。
 エリートとされる高級官僚の倫理観、責任感欠如を露呈した。同省のガバナンス(組織統治)が効いていないことは明らかだ。
 政治権力が一極集中することに伴う、官僚組織の劣化の表れとも言える。文科省の立て直しを急がなくてはならない。
 まずは、外部の有識者チームによる徹底した調査・検証と、抜本的な再発防止策が求められる。
 幹部職員の意識改革が不可欠だ。官民癒着を防ぐため補助事業や権限の在り方を見直すとともに若手やベテランが活躍できる環境整備、人事システム改善といった組織改革を進める必要がある。
 文科行政への信頼回復の道のりは険しいが、職員一人一人が透明性や公平性を意識し、地道に職務に取り組むしかない。

[京都新聞 2018年09月22日掲載]

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