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ドローン規制法  軍事の「聖域化」を危惧

 小型無人機ドローンによる自衛隊や米軍の施設上空の飛行禁止を盛り込んだ改正ドローン規制法が成立した。テロや事故、悪用を防ぐには一定の規制は欠かせない。とはいえ取材メディアを含む一律規制に危惧を禁じ得ない。
 2016年施行の現行法はドローンを使ったテロを防ぐ目的で、首相官邸や原子力施設周辺などの上空飛行を禁じてきた。改正法は新たに自衛隊や米軍の施設を加えた。
 施行後は、基地などの管理者の同意がなければドローンによる空撮ができなくなる。米軍については、基地周辺だけでなく提供水域・空域も規制する方針だ。
 加えて、改正法は9月開幕のラグビー・ワールドカップ日本大会と来年の東京五輪・パラリンピックの警備対策のため、大会期間中に限って取材メディアを除き会場上空の飛行も禁止する。
 テロ防止の狙いは同じだが、国民の理解を得やすい大会運営向けの暫定措置と抱き合わせて、恒常的に軍事施設の「聖域化」を図るとみるのはうがち過ぎか。
 飛行を禁じる対象施設は防衛相が指定する。だが防衛省は度々、情報公開に後ろ向きな姿勢が指摘され、恣意(しい)的に運用されないかとの懸念を拭えない。そもそもドローン規制は米軍が日本政府に要請した経緯があるとされるからだ。
 例えば米軍機の事故などが起きた場合、広範囲に飛行規制がかかり、メディアの取材に支障を来す恐れがある。岩屋毅防衛相は「取材活動の重要性は理解している。国民の知る権利に配慮して、適切に運用を図りたい」というが、額面通りに受け取っていいものか。
 国会審議で、沖縄県名護市辺野古で進む米軍普天間飛行場移設工事をドローンで撮影できなくなる懸念も指摘された。基地が集中する沖縄では、ドローンによる空撮は取材や市民団体の監視活動に欠かせない手段になっている。メディアや市民の目を奪い、不都合な真実を伏せることは許されない。
 日本新聞協会は「取材活動を大きく制限、取材・報道の自由が阻害される」と反対を表明。衆参両院も政府に配慮を求める付帯決議を採択した。必要限度を超える規制により国民の知る権利などが損なわれないよう運用を注視したい。
 ドローンは搭載カメラによる測量や施設点検をはじめ、宅配サービス、農業管理、防災など利活用の動きが加速している。拙速な規制強化はその芽を摘むことにもなりかねない。規制と利活用のバランスを取ることが肝要である。

[京都新聞 2019年05月24日掲載]

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