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アウティング  行政は率先して禁止

 同性愛などの性的指向や性自認を本人の了解なしに暴露する「アウティング行為」は、当事者を追い込み、心身にダメージを与える深刻な問題である。
 だが、行政の対応は進んでいない。共同通信が全国の都道府県と政令市の67自治体に聞くと、禁止を定める職員向けのマニュアルなどを作成しているのは1割にとどまることが分かった。
 性的少数者について社会の理解は徐々に進んでいるものの、差別や偏見が招く問題に関する認識はまだ十分ではない。
 同性の友人に「友だち以上の気持ちがある」と告白した女子高生が、翌日学校に行くと友人に「あの人はレズビアン」と言いふらされていた―。
 民間団体の電話相談窓口には、不登校や退職に追い込まれるそうした被害が寄せられている。
 2015年には一橋大法科大学院の男子学生が、同性愛者だと同級生に暴露された後に転落死する事案が発生した。
 一橋大がある東京都国立市は、アウティング禁止を盛り込んだ条例を全国で初めて施行した。国は職場でのアウティング防止の指針づくりを今後検討するという。
 必ずしも悪意のあるケースだけではない。告白された側が驚き、抱えきれずに友人らに話してしまい、結果として心ない中傷が広がってしまうことが多い。
 「当事者は一瞬にして居場所を失う。引きこもりや困窮状態になるなど『負のスパイラル』に陥ってしまう」。電話相談の担当者は注意を促す。
 こうした事態を避けるには、正しい知識や対応の仕方を知ることが必要だ。
 共同通信の調査では、当事者のプライバシー保護やアウティングの禁止、窓口対応などでの配慮を定めた職員用マニュアルやガイドラインなどを作っていたのは、わずか9自治体だった。
 7自治体は今後作成する、15自治体は職員研修で注意喚起していると答えた。
 個人情報を扱う役所は、アウティングが起きやすいとの指摘もある。当事者の生活を破壊しかねない行為だと危機感を持って取り組むべきだ。
 専門機関の整備に積極的に関わり、対応のノウハウを持つ相談窓口があることを住民に広く知らせるような対応が望まれる。
 性的指向や性自認に限らず、プライバシーを守るのは大切なことだ。地域の人権意識向上へ、率先して取り組んでほしい。

[京都新聞 2019年07月15日掲載]

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