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医師の働き方  実効性ある対策早急に

 医師の働き方改革を議論する厚生労働省の検討会が、勤務医に適用される残業規制案を示した。
 救急や周産期などを担う特定の地域医療機関には、一般の勤務医(年960時間)の2倍の「年1900~2千時間」を2035年度末まで認める。
 1カ月約160時間となる計算だ。過労死ラインとされる「平均80時間」の2倍である。過労死しかねない水準を大幅に超えて働かせても、医療機関は雇用者責任を問われない。
 規制の名に値しない。なんとか支え合っている地域医療の現場が荒廃するのは目に見えている。
 新年度施行の改正労働基準法で時間外労働規制は年720時間、月100時間未満、複数月平均80時間が限度となった。一方、医師には適用が5年間猶予され、上限時間も別に設定することになっていた。
 医師法に「医師は正当な事由がなければ診療を拒めない」という「応召義務」が明記されていることや、医師不足のなかでの大幅な労働時間規制は地域の医療体制を崩壊させかねない、という懸念が出ていたためだ。
 国の方針は過酷な現状の追認に他ならない。若い医師を中心に地域医療から遠ざけてしまうことにならないか。
 医師の労働時間は職種別で最も多い。時間外労働が月80時間を超える人が40%を超え、過労死や過労自殺も後を絶たない。16年には新潟市民病院の研修医が自ら命を絶った。
 国は医師の健康確保措置が着実に実施されているか第三者機関が点検する仕組みや「勤務間インターバル」の導入を検討しているという。医師の献身に頼るのはもはや限界である。実効性のある対策を早急に導入してほしい。
 国は昨年4月、現状の医学部定員で「28年ごろに医師不足が解消される」との試算を公表した。同時に、時間外労働の上限を月60時間にすると33年ごろまで医師不足が続くと推計していた。働き方改革を前提に定員も見直すべきだ。
 医師が都市部や特定の診療科に偏る傾向も放置できない。医学部の「地域枠」も欠員が出ている。若い医師が自ら望んで地域医療を担うよう、従来にない誘導策が必要だ。
 医療現場の仕事の分担も見直したい。専門的な知識のある看護師らに一部の医療行為を任せたり、データ入力を専門に担当するスタッフを配置することも、さらに進めてほしい。

[京都新聞 2019年01月22日掲載]

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