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社説:カシミール問題 インドは直轄化撤回を

 あまりに一方的な行為というほかない。

 インド政府が北部ジャム・カシミール州の自治権を剥奪し、直接統治を始めた。10月末からは連邦政府直轄地にする方針だ。

 同州を巡っては、1947年にインドとパキスタンが分離独立して以来、両国が領有権を争ってきたが、インドの措置によって同州は消滅してしまう。

 パキスタンは係争地での一方的措置として反発し、インド大使の追放や貿易停止などの対抗措置を打ち出している。カシミール地方の一部を実効支配する中国もインドの行動に反発している。

 関係3カ国は核保有国である。インドは、地域の緊張を高める危険な決定を早急に撤回すべきだ。

 同州はイスラム教徒が多数派のカシミール、ヒンズー教徒が多いジャム、仏教徒もいるラダックの3地方から成る。

 英連邦からの分離独立時、多数派のイスラム教徒はパキスタンへの帰属を望んだが、ヒンズー教徒の藩王がインド帰属を決めたという経緯がある。

 一方でインドは憲法で同州に高度な自治権を与え、州民以外の土地所有も制限した。対立や混乱を避ける狙いがあった。

 ところが今回、インド政府はこの憲法規定を削除し、同州を二つの連邦政府直轄地に分割することを決めてしまった。与党が圧倒的多数の国会も追認した。

 同州政府や住民との話し合いも経ていない。それどころか、インド政府は軍隊を送り地元政治家を拘束し、州と外部の通信を遮断した。

 強引な行動の背景には、ヒンズー至上主義を掲げたモディ首相と与党インド人民党(BJP)の姿勢がある。

 BJPは今年の下院選で自治権剥奪を公約に掲げて圧勝し、モディ氏に具体的行動を起こすよう強く求めていた。

 モディ首相は政治基盤を固めるために与党の意向を最大限にくんだといえる。

 インドには他地域にも多くのイスラム教徒が住む。

強引な手法は反発を強め、国内の治安悪化につながりかねない。

 パキスタンはこの問題を国連安保理で取り上げるよう求めている。インドは「内政問題」と主張しているが、核保有国同士の軍事的緊張は、明らかに世界の問題である。

 日本は印パ両国に強く自制を求めてほしい。国連安保理の協議開催も働きかける必要がある。

【 2019年08月14日 13時40分 】

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