Kyoto Shimbun 2002.8

「オンリーワン」必要
  山田牧場(牛乳販売店・北区紫竹)

低温殺菌牛乳と一緒に有機栽培の米やパンも配達する(京都市北区)
 京都市北区の住宅街にある牛乳販売店「山田牧場」に毎日正午になると、一台の保冷トラックが到着する。届くのは、その日の朝に滋賀県信楽町の牧場でしぼられたばかりのオリジナル牛乳「山田牧場低温殺菌牛乳」だ。牛乳特有の臭みがなく、胃腸にも優しいと牛乳が苦手な人や高齢者にも人気を集めている。

 同店の山田雅哉社長(46)は「メーカーの作っているモノを仕入れて、ただ売るだけでは厳しい。今後はどこにもないオンリーワンの商品が必要」と力を込める。  祖父の代から北区紫竹と左京区修学院で牧場を経営していたが、一九六八年に牧場を滋賀県信楽町へ移転、大手メーカーの牛乳販売店を始めた。

 長年メーカー品だけを扱っていた同店が、オリジナル商品の低温殺菌牛乳を発売したのは八八年。加工乳や乳飲料が出回り始め、「乳質向上のために飼育環境や飼料に気を配っている酪農家の苦労が生かされていない」と感じた。またお客から「牧場があるのに、どうして自店の牛乳がないの」と言われたこともきっかけだった。

 低温殺菌を開発

 信楽の牧場を経営しているいとこと専門家の講演会や海外の状況などを勉強し、六五度で三十分間の熱処理した低温殺菌牛乳を開発した。

 山田社長は「メーカーの作る高温殺菌牛乳は、牛乳に含まれるカルシウムやタンパク質が、熱で吸収されにくい形に変化している。牛乳本来の味わいにした」と話す。  発売当初は、低温殺菌牛乳についてほとんど知られておらず、一日二十本の宅配だったが、徐々に認知され、現在では宅配のみで九百ミリリットル入りで月約七千六百本、五百ミリリットル入りで月約六千五百本を販売している。

 さらに五年前から、牛乳以外の宅配にも乗り出した。有機肥料で育てた米やパン、低農薬大豆を使った豆腐など約二十種類を販売している。チラシを配布して注文を受け付け、牛乳と一緒に宅配する。「自然素材で健康にいい商品はニーズがある。低温殺菌牛乳にマッチした商品で、客単価の向上を図る」のが狙いだ。

 九八年七月には、府内の同業者と協同組合ライフサポートを設立、共同で天然素材の加工食品や調味料などを仕入れ、販売している。また昨春からは、兵庫丹但酪農農業協同組合の低温殺菌牛乳も兵庫、大阪の同業者と共同で宅配を始め、他社と連携した事業展開も積極的に進めている。

 地域顧客に密着

 宅配先は十五年前は約八百世帯だったのが、現在は約六千世帯に増加。二〇〇二年二月期の売り上げは、宅配部門だけで約二億五千万円と六倍以上に伸びた。

 山田社長は「とにかく地域、顧客に密着するしか生き残る道はない。お客が何を求めているのかをきめ細かに把握し、必要な商品を届けたい」と意欲を燃やしている。

 ここがポイント
<今後の事業モデルに>
 協同組合ライフサポートの山下悦生理事長(山下牛乳店社長) 古くからの商売のやり方や資産に甘んじている牛乳販売店が多いなかで、山田牧場は自社商品を開発し、新しいシステムを取り入れている。また、お客のニーズにあったさまざまな商品を宅配の中に取り入れて、事業を拡大している。今後の牛乳販売店の一つのビジネスモデルになるだろう。

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