Kyoto Shimbun 2002.8

遊び実演で魅力伝え
  KID’Sいわき ぱふ(玩具店・宇治市宇治)

子育て講演会で、積み木を使った遊び方を子どもたちに教える岩城社長(長岡京市今里・今里保育所)
 京都府長岡京市の今里保育所で開かれた子育て講演会。「こうやって遊ぶんやで」。積み木や鉄道模型の木製おもちゃが所狭しと並ぶ教室で、玩具店「KID’Sいわきぱふ」の岩城敏之社長(46)は、子どもたちに話し掛け、積み木の遊び方を教えていた。高く積み上げたり、複雑な形を作ったりするたびに、岩城社長の手元に子どもや母親の視線が集まった。

 ドイツ製を中心とする木製玩具や絵本を携え、十五年ほど前から近畿各地の保育所を巡っている。子どもや親に遊び方を伝える実演販売を展開するためだ。岩城社長は「百の理屈をこねるよりも、持ち込んだおもちゃで子どもが夢中で遊ぶ姿を見てもらうのが一番」と話す。

 岩城社長は、京都府南部で有数の規模を誇る玩具店に生まれた。大学卒業後、八年間の会社勤めを経験し、一九八六年に玩具店の跡取りとなった。

 木製玩具主力に

 家業を継いで間もなく、大手メーカーの製品を主に取りそろえる商いを見直した。二つの出会いがきっかけだった。

 一つはオランダ出身の絵本作家レオ・レオニ作の絵本「フレデリック」。冬場に食糧が尽き、苦境に陥った野ネズミたちを、普段は遊んでばかりのフレデリックという名前の野ネズミが絵や詩を披露して救う筋書きだ。「遊びは人が人らしく生きるうえで大切な行為。遊びを提供する玩具店にも社会的な役割があるんだと教えられた」(岩城社長)

 もう一つはフィンランドの木製玩具「ハンマートーイ」。板に打ち付けられた長さ十センチほどの六本のくいをハンマーでたたいて遊ぶ単純なつくりだ。「子どもは『たたく』という行為が好き。でも、のべつまくなしに物をたたかれては親がたまらない。しつけをしつつ、代替物を与える。ヨーロッパの玩具はよく考えて作られていると思った」と振り返る。

 ドイツや北欧の木製玩具や絵本などを本格的に販売し始めて五年後には、その売り上げが大手玩具メーカーの製品の売り上げを上回った。一九九七年からは木製玩具と絵本の販売に的を絞るようになった。

 現在の取り扱い商品は玩具約一千種類、絵本約七千冊。「遊んでもらわないとおもちゃの良さが伝わらない」と、来店した子どもが商品を気軽に手に取って遊べるようにし、親には子どもの発育段階に合わせたおもちゃ選びを勧めている。

 会員制や講習も

 販売だけでなく、子育て講習会や手づくりおもちゃのワークショップを店で開いたり、育児法をテーマにした著書や絵本の訳書を計十七冊発行するなど子育てをテーマに幅広く活動している。

 商品の値段や講習会の参加費を割り引く登録会員は全国で約二千人にのぼる。売り上げも昨年、家業を継いだ当時の二倍近い二億円に達し、今年三月には大阪市阿倍野区に新店舗を出した。岩城社長は「自分が悩みながら考えてきたことが、親のニーズと重なり合うのだろう。おもちゃや絵本とともに、それらを通じての子育てを伝えたい」と言葉に力を込めた。

 ここがポイント
<消費者への姿勢が奏功>
 小野木章光・日本玩具協会事務局次長 玩具メーカーや小売店の販売方法といえば、一般的に売りっぱなしがほとんどで、実演販売という手法は非常に珍しい。木製おもちゃは元々、木独特の温もりを求めて購入する人が多く、コンスタントな売れ行きが期待できる分野。より消費者に近い立場から接する姿勢も効を奏し、支持を集めているのだろう。

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