Kyoto Shimbun 2002.8

季節感、新鮮さに工夫
  錦大丸(鮮魚店・中京区錦小路通高倉東入ル)

食事の簡便化を見据え、小分けパック、焼き魚などの販売で新規顧客の開拓を図る(京都市中京区・錦大丸)
 新鮮な食品を求める市民らでにぎわう京都の台所、錦市場に店を構える鮮魚店錦大丸。威勢のいい掛け声と、独自の工夫を凝らした魚の陳列で買い物客の心をつかみ続けてきた。

 強い傾斜のついた陳列台の上、イワシなどの大衆魚は買い物客の近くに、高級魚は客から離れた位置に並べる。これで大衆魚の売れ行きが伸びる、という。陳列の基本の忠実に守って実践し、新鮮さを強調する。いけす、冷凍ケースの導入も新鮮さを印象づけるためだ。

 二代目の大隅勇三社長(55)は「国産を中心にこだわりの魚を大切にしている。旬の魚をおいしい時に売れるように季節感を陳列で表している」と自信を見せる。

 創業は一九六〇年。当初は錦市場に五十平方メートルの店を構え、家族で切り盛りしていた。スーパーが少ない時代は周辺百貨店や室町の呉服問屋などを得意先として成長してきた。ピーク時からは減少したものの、昨年度の売上高は二億八千万円。鮮魚小売店として売り上げ規模は大きく、創業時と同じ広さの店内で正社員とアルバイト計十三人の従業員があわただしく動き回るようになった。

 核家族化に対応

 核家族化で食事が簡便化している状況に対応して十年ほど前から総菜も扱い始めた。焼き魚の種類を増やすなど工夫を凝らして、若年層の獲得に取り組んでいる。最近の消費者の少量多品目の要求に対応して京都市中央卸売市場(下京区)だけでなく和歌山から直接魚を仕入れる。三十以上の仲卸業者とパイプを持ち、他店に引けを取らない品ぞろえを実現。これらの創意工夫が評価され、九八年度には食品流通構造改善促進機構主催のコンクールで優良小売店の表彰を受けた。

 IT戦略も模索

 だが、大手スーパーの攻勢で売り上げに占める小売りの割合が縮小、卸売りに頼らざるをえない苦戦が続いているのも事実。そこで新たに模索しているのがIT(情報技術)戦略だ。錦市場全体で取り組んでいる携帯電話注文サイトに加盟して通販にも取り組むようになった。

 IT需要を増やすため、錦市場を訪れる観光客の顧客開拓に力を入れる。パンフレットを作って配り、インターネット通販サイトに加盟して「錦ブランド」を強調し、順調に注文を伸ばしてきた。観光客向けに三十年前に開発したオリジナルのサバ寿司も根強い人気を呼んでいる。

 「うちは立地に恵まれている。しかし、店の前は今、ただ客の通り道になりかけている」。大隅社長は、危機感をバネに自店と錦市場の将来を展望し続ける。「スーパーやコンビニエンスストアにはない錦市場の味わいを大切にして、いかに客を引きつけるか。各店で、市場全体で考えなければならない時期を迎えている」。

 ここがポイント
<満足度への姿勢評価>
 食品流通構造改善促進機構の小林達司経営指導課長 安くておいしい魚を気持ちよく買えるという高い顧客満足度を得られる。特に計算された陳列方法、店員の専門知識の豊富さ、多様な仕入れルートの確保、食事の簡便化をキャッチした調理品の充実、氷のサービスといった常に消費者ニーズを念頭に伝統を守りながらも新しいことに前向きに取り組む姿勢が評価できる。

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