Kyoto Shimbun 2002.8

「本物」販売に活路
  ハセガワ(米穀店・伏見区深草)

店頭で真空パックされたコメ袋を手にする長谷川さん。写真をあしらった店頭広告でこだわりの米をアピールする(京都市伏見区深草)
 「米屋の米が売れない」。一九九五年の食糧管理法廃止以降、スーパーやコンビニなど誰でも米を売ることができるようになり、昔ながらのお米屋さんはこう嘆く。米屋で米を買う消費者は約一割、京都府内の米屋は約半分が廃業し四百八十店まで激減した(京都府米穀小売商業組合調べ)。そんな逆風の時代、真の米屋のプロを目指すのがハセガワだ。

 店主の長谷川正治さん(53)は、今秋の新米から有機栽培米を販売する。「食の安全が問われている今、農薬や化学肥料を使用しない有機栽培米の需要は必ずある」と見る。府内の小売店としては有機栽培米の販売店第一号となる。

 過去に「有機」表示が混乱した時期もあるが、改正JAS法によって、栽培田は直前二年間農薬・化学肥料を使っていないことが有機表示の条件となった。同時に取り扱い小売店も、精米時にほかの米が混じらないよう、厳格な管理が求められ、第三者認証機関の認定が必要になった。有機栽培米は米全体の流通量のごくわずかで、同業者は模様眺めの状態だ。

 同店は、宮城や新潟、滋賀など七地域十六農家と直取引し、無農薬や減農薬の米販売にこだわってきた。その量を年々増やし、現在は全販売量の半分を占める。産地には何度も足を運び、「農家とは親せき以上の付き合いだ」という。

 「農薬を使っているかどうか、あぜ道の雑草の見ると分かる」「水を蓄え、気温を下げるという水田の機能を軽視してはいけない」。自然に向き合う姿勢を、農家との対話の中で学んだ。

 「米不足」転機に

 以前は普通の米屋だった。「米屋が守られていた食管時代は、上流(農家)のことも、下流(消費者)のことも知らなかった。それでも商売ができた」。転機は九四年の米不足騒動だ。

 当時、政府米はタイ産や米国産の米とのセット販売を強要され、米屋は困った。外国産米に不慣れな客からは「なんでこんなん買わなあかんのや」と言われた。「自分で売るものは自分で確保せなあかん」。長谷川さんはそう考え、食管法廃止を好機にした。

 精米技術に磨き

 「いつものお米を持ってきて」という客にこたえるため、年間を通じて均一な米を販売するために、小売店としては巨大な計六百俵(一俵は六十キロ入り)を納める低温加湿倉庫を二基設置。長谷川さん自身は業界団体主催の「お米アドバイザー」資格を全国二番目に取得し、一緒に働く弟誠司さん(47)も同様の精米技術講習で学んだ。

 年商一億二千万−一億三千万円のうち半分を米販売で、残りを酒販売で稼ぐ。しかし「売り上げはここ二年、下げ止まりしたのがやっと」というのが現実だ。「販売区域が定められていた食管時代の名残で、顧客開拓も容易でない。うちだけの事情だが、店近くの新道建設に伴う立ち退きで、得意客が転居したのも痛い」。

 最近、店のパンフレットを作製した。カラー写真入りのそれを手に長谷川さんは「老舗の和菓子屋みたいでしょう。これからの時代、米屋もね」と笑顔を見せる。インターネット通販も開始し、全国区で得意客開拓を目指す。(おわり)

 ここがポイント
<誇り持った営業強み>
 片山忠京都府米穀小売商業組合理事長 栽培農家の顔写真を店頭に掲げるなど、店頭広告も美しく、昔の米屋のイメージをぬぐい去った。資本投下に見合うほど売れるのか、と同業者がためらう有機栽培米販売に踏み切るなど、夢と誇りを持っての営業が強み。有機栽培米が消費者に受け入れられれば、追随する同業者も多いはずだ。

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