Kyoto Shimbun 2002.12

ぴたり「好みの1本」
ワインクレージ(ワイン専門店・京都市中京区西大路通三条上ル)

商品知識の理解は、自分で飲むことから始まる。顧客にワインの説明をする岩田社長=右(京都市中京区)

 酒販業界では1970年代、すでに価格競争が始まりつつあった。「安売り合戦に巻き込まれたら、大資本に勝てるはずがない」。大型店に負けないための独自路線を求めた社長の岩田登市男さん(58)が75年ごろにたどり着いたのが、ワイン専門店だった。「ワインは飲まなければ語れない。値段だけで勝負する大型店にはないサービスを提供できる」との考えがあった。だが当時はウイスキー全盛の時代。扱い始めたばかりのワインは、手作りの棚に遠慮がちに並べていただけだったという。

 その後、数回のブームを経て、日本でも家庭でワインを味わう楽しみが定着。家族を中心にこつこつと営む小さな会社は昨年、2億8000万円の売り上げを記録した。今後はワインを扱う店がさらに増えることが予想されるなか、岩田さんは消費者の要求は価格か質に二極化するとみている。「数を売ろうとするのではなく、納得できる品物を買ってもらうために、お客さんとの長い付き合いを大切にしたい」との方針を掲げる。

 品ぞろえ2万本

 その気持ちは、店舗にも現れる。ゆっくりと落ち着いてワインを選べる雰囲気を整えようと、石川県の古い民家を移築した木造の店舗は、温かみのある雰囲気が心地よい。店内が薄暗いのは、光や熱で熟成が進んでしまうため、和紙を通した弱い照明しか使わないからだ。また暖房は入れないため、冬場はコートが必要なくらいひんやりしている。その店内に並ぶワインは、1000円余りのものから数十万円の品物まで5000本以上。地下1階の倉庫も含めると2万本にのぼる。すべて自分で試飲してから販売を決めた「大切な箱入り娘みたいなもの」という。

 試飲で舌きたえ

 目移りするほど多様な商品の中から客のニーズを的確につかんでぴったりの1本を勧めることが「店が生き残るすべて」と強調する。例えば1万円のワイン。封を開ければ味は千差万別だ。「中身が伴わないのに値段ばかり高い品物は確かにある。そんな商品をカットして、お客さんが味も価格も満足できる品を届けたい」と話す。

 好きな味をブドウの品種や年代などで指定できる客は多くないが、口当たりや濃さなどの好みは人それぞれ。言葉にならない客の要求にこたえるためには、自分で飲んで舌をきたえるしかない。最初は無差別に試した。「正常なのか傷んでいるのかも分からなかった」と笑うが、今でも毎晩最低二種類のワイン試飲は欠かさない。

 「高いワインをちょっと味わいたい」という客の要望にこたえるため、4年前に店の一角にテイスティングコーナーを設けた。五種類のグラスワインやシャンパンが400円からの手ごろな価格で味わえるのが人気だ。今後も貴重なワインが豊富にそろうだけでなく、客の要望にこたえられる専門店としての誇りを持ち続けたいと胸を張る。

 ここがポイント
<独自性と雰囲気が効果>
 西別當選・日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ ワインは生鮮食品と同じで、いつも同じ商品が店頭にあるとは限らない。それでもぴったりの1本を選べる品ぞろえと商品知識が消費者を引きつけているのでは。顧客のニーズに確実にこたえられることが独自性につながっている。さらに独特の雰囲気の店舗も効果的に働いている。

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