Kyoto Shimbun 2002.12

感激される総菜作る
  錦平野(総菜専門店・京都市中京区錦通堺町東入ル)

常連客に混じって観光客も足を止めるオープンケース形式の店頭(京都市中京区)
 そぞろ歩きの観光客が行き交う京都錦市場商店街(京都市中京区)にあって、店頭はいつも地元の常連客でにぎわっている。うの花や金時豆、ひじきなど店頭に並ぶ総菜はすべて出来立て。「食べてうまいと感激してもらえるような総菜づくりをいつも心掛けてます」。社長の平野稔さん(71)の言葉にてらいはない。

 同志社大学を卒業した平野さんは1953(昭和28)年、錦通の空き店舗を借りて商売を始めた。学生時代から店を持つなら「錦で」と心に決めていた。大阪で総菜店を営んでいた父親の援助を受けて、料理長を派遣してもらい、3人で商売を始めた。

 56年には京都高島屋に出店。「デパ地下」などという言葉はまだない時代だったが、魚のフライやサラダが人気で、順調に売り上げを伸ばした。「モノがあふれている今とは違って作れば売れる時代でした。百貨店の担当部長が父の知り合いで、最初は親がかりの商売でしたな」と平野さんは振り返る。

家庭料理ヒント

 自分のカラーを出そうと大阪で揚げ物の修行をしたこともある。コロッケ、串カツなどが商品に加わった。料理が得意な夫人の美智子さん(68)が作る家庭料理をヒントに商品化した総菜も数知れない。71年に出店した大丸京都店のヒット商品となったグラタンもその一つだ。

 順調に見える総菜店経営だが、バブル期とそれに続くデフレ不況で売り上げが伸び悩んだ時期もある。バブル期には高級料理がもてはやされ、不況になると消費者は財布のひもを固くする。デパ地下が全盛を極め、新規参入で総菜業界も競争が激しくなる一方だ。

昼食で総菜点検

 「本当においしいものを作れば必ず売れる」。平野さんはゆっくりかみしめるようにそう語る。「お客さんに喜んでもらうことを私たちの仕事にしたいと考えてます」。商品を点検するために毎日、必ず店頭で売る総菜で昼食をとる。

 季節感のある旬の食材を使うことはもちろん、半素材や既製品は一切使わず信頼できる仕入先から取り寄せた食材を一から加工する。また、見た目や日持ちをよくする色素、防腐剤などの添加物も使用しない。化学調味料も加えない。

 2000年には本格的に店舗改装。対面販売に加えて、客が自由に総菜を選べるオープンケース方式を1部採用した。東京や大阪のデパ地下にも京都を代表する総菜店として商品供給している。従業員はパートを含めて40人、02年12月期の売上高は3億円を突破しそうな勢いだ。

 長男で専務の泰三さん(38)は、コンピューターソフト会社から転職して11年目になる。来年は創業50年の大きな節目の年。泰三さんは「手作りの店が見直されている。これからもお客さんの信頼にきちんとこたえていきたい」と話した。

 ここがポイント
<手作り見えるのがいい>
 工藤晃三京都小売商業支援センター商業アドバイザー 店というのは「見せること」が原点だが、手作りの様子が店頭からでもダイレクトに見えるのがいい。見せることで出てくる客のニーズをうまく商品開発にもつなげている。京都の台所と呼ばれる錦に店を構えているのも魅力だ。

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