Kyoto Shimbun 2003.6

ブランド高める接客
  三味洪庵(つくだ煮製造販売・京都市東山区神宮道三条上ル)

平安神宮を巡った観光客らでにぎわう店内(京都市東山区)
 平安神宮から500メートルほど神宮道を下がった道路沿いに和風店舗を構える。80平方メートルほどの売り場では、接客マナーの研修を積んだ店員がにこやかに応対する。京言葉でおかずを意味する「おぞよ」。京都らしいそんな名をつけた高級つくだ煮が人気だ。

 京都中央卸売市場(京都市下京区)でつくだ煮・総菜卸「戸川」を営む戸川博文社長が6年前、アンテナショップとして開店した。対面販売で客のニーズを吸収し、商品開発につなげる。「取引先から突然切られるか分からない」(戸川社長)という不況時代に、新たな販売チャンネルを確保する思惑もあった。

挑戦する老舗

 1948(昭和23)年創業の戸川は、戸川社長が3代目だが、そのルーツは古い。江戸から明治時代にかけて平安神宮の鳥居の辺りで問屋を営んでいたいたことや、北海道から敦賀(福井県)に回船「北前船」で運ばれたコンブやニシンなどを扱っていたことなどを記した文書が社内に残っている。

 老舗ともいえる同社だが、伝統の味をいちずに守っているわけではない。土産・贈答向けにシフトして売り上げ増を図る大手の一方で、後継者難が絡んで事業縮小を余儀なくされる中小もいるのがつくだ煮業界だ。戸川社長は「昔と同じことをやっていては駄目だ」という。

 ちりめん山しょうで97年に水産庁長官賞、「おぞよみそ」で2002年に農林水産大臣賞を受賞した。ちりめん雑魚は、瀬戸内の天日干しのものを仕入れ、手作業で異物を取り除くなど素材を生かす。京みそベースのおぞよみその開発は、食通で知られる芸術家のもとに日参し、助言を得ながら完成させた。

 いま力を入れているのは、京野菜を素材とした商品開発だ。春は京たけのこ、夏は万願寺とうがらし…。ちりめん山しょうをあえて、つくだ煮と総菜の中間的な商品を目指す。品評会出品と新商品開発への積極的な取り組みを戸川社長の長男の貴仁店長は「工場担当者自身の勉強と励み」と表現する。

目が届く範囲で

 2年半前にJR京都伊勢丹(京都市下京区)に2号店を出店した。2店舗合計の売上は、当初比で4倍増となり、卸を含めた全社の1割を占めるまでに成長した。ただし、これ以上の店舗増はない。戸川社長は「目が届く範囲で、客と気持ちを通わせたい」と言う。

 平安神宮近くの本店では、店内に腰掛けを配して、リラックスできる京の風情を醸し出す。つかず離れずの接客マナーに力を入れるのは、ブランドイメージを高めるためだ。京のつくだ煮であることを最大限生かした戦略で、リピーターの獲得と口コミでの顧客拡大を目指す。

 ここがポイント
<イメージ売る京都戦略>
 京都産業21経営革新課の安東正浩主任 客のニーズを加味し、こだわり素材でオリジナルの味を開発しており、品評会での入賞も評価を高めている。高級つくだ煮のイメージに合わせ、接客マナーにも力を入れている。安売りでなく、イメージを売る京都ブランド戦略だ。

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