Kyoto Shimbun 2003.10

生活潤す「香り」提案
  山田松香木店(香原料輸入、製造、販売・京都市上京区室町通下立売上ル)

 広々とした店内には香原料から線香、匂い袋などさまざまな商品が並ぶ(京都市上京区)
 御所から一筋西へ。室町通に面した京町家風の外観の店舗に一歩入ると、どこか懐かしい優雅な香りが鼻腔をくすぐる。広々としたフロアには、1000種類をゆうに超える香にまつわる商品がおしゃれにレイアウトされている。店舗奥には400もの引き出しがある薬種だんすが壁面を覆い、伝統を感じさせる。

 仏教とともに普及した香の様式は、平安時代には貴族が着物にたき込めて自分の個性を醸し出すなど伝統文化になり、香道として発展、変遷を遂げながら現代生活を潤す文化として継承されている。

創業は寛政年間

 同社は江戸時代、寛政年間(1789−1801)創業の老舗。4階建ての店舗は、昨年12月に新築したばかりで、貯蔵庫や香木を削る実演スペース、銀閣寺内のものを写した香室などがある。

 香木の香りを楽しむ「聞香(もんこう)」や独自に香原料を調合する煉香づくりの体験もできるなど「香のミュージアム」を目指している。山田英夫社長(55)は「御所に近いこの地域は、香文化の発祥地という地の利がある。新規顧客にも文化性をアピールしたい」と話す。

 香木はベトナムなど東南アジアでしか産出されない最高級の伽羅(きゃら)や沈香(じんこう)、白檀(びゃくだん)などがあり、山田社長自ら年に数回現地を訪れ、厳選輸入している。

 これら香木は、何十年から何百年をかけ芳香樹脂が沈着した樹木で、人工栽培は不可能な貴重な存在。同社は香木、薬種の輸入、製造、販売までを一貫して行っているため、品質には定評がある。店内にはグラム1万円もする最高級香木から、300円の匂(にお)い袋まで豊富な商品群が自慢だ。

ネット販売充実

 現在、卸と小売は8対2の割合だが、流通の変化に応じて小売部門を増強しようと、アンテナショップでの直販やインターネット販売を充実している。京都本店のほか東京都内や近鉄百貨店京都店に直営店を持つ。「時代の変化とともに多様な流通経路に全方向で対応する。後れを取り、手に負えないようになってからでは遅い」(山田社長)。

 だがネット販売には難点もある。自慢の香りが伝わらない点だ。「言葉や映像で雰囲気をいかに伝えるか。操作を少なく手軽に購入できるようにサイトを充実したり、サンプルを贈るなど新規顧客を大切にしています」と山田社長。ネット販売が増えると、ショップへの来客につながる。相乗効果が期待できるという。

 訪れた人に聞香の作法、原木からの製法を含め歴史や文化を伝えるため、社員全員で知識や技能を共有するような研修を強化している。山田社長は「京の地にはぐくまれた雅文化を伝承し、現代人にマッチしたライフスタイルを提案したい」と張り切っている。  

 ここがポイント
<伝統の世界を楽しめる>
 京都伝統工芸士会連合会長で染色家の田畑喜八氏
 香と着物は歴史的に深いかかわりがあり、江戸幕府四百年を記念して制作した私の着物にも、オリジナルの香を制作していただいた。香になじみが薄い人にもわかりやすく楽しめる店づくりを実践されている。伝統の世界が身近な存在になるようなアピールの仕方などは、伝統産業の業界にとって見習うべきところだ。

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