Kyoto Shimbun 1999.6.9 私の経営論
 原点回帰で再編に対応
びわこ銀行次期頭取
長尾 卯氏

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 今月二十九日の株主総会後、今井芳男頭取からバトンを受け、新頭取に就任する。地方銀行は、二〇〇一年四月のペイオフ(預金払い戻しの保証額を元本一千万円までとする措置)解禁を控え、再編、淘汰(とうた)のあらしのまっただ中。第二地銀のびわこ銀行も、大手銀行並みの水準で不良債権を処理し二年連続の赤字決算に踏み切った。激動の中で、どのようにかじを取り、地域金融機関の再生を目指すのか。その経営戦略、抱負を聞いた。

 「地域の良き隣人」

 ―大手銀行の整理が一段落し、金融再編の動きは地銀、第二地銀へと進んできたようだが。

 「地域金融機関にとって、現在はある種の非常事態だ。妙手はないが、二つの対応策が必要。一つは即効療法で、不良債権というバブルの後遺症を何とか治さなければならない。不良債権処理には早くから取り組み、一応やるべきことはすでに実行している。今後は損失をある程度覚悟してでも担保を処分して健全性を高めなければならない。もう一つは、金融業としての原点回帰だ。株式会社であるとともに、銀行は社会の公器。事業を通じて社会に貢献しなければならない」

 ―金融再編のあらしの中で、さらに競争激化が予想されるが、どのような銀行を目指すのか。

 「頭取に内定してから、全支店長と懇談したが、ある支店のディスプレーに『堅実経営で、地域社会と歩む良き隣人、びわこ銀行』と書かれていた。まさに、これだ、と思った。滋賀県で逃げ隠れできない地域金融機関。それに徹して中小企業者を支援し、県民の生活向上に寄与する銀行に特化すべきだ。そうすれば自ずと銀行のあるべき姿が見えてくる。規模を求めるのではなく、地域金融機関の質を求めるべきだ」

 高い経費率にメス

 ―不良債権処理で二年連続の赤字決算となるが、どのように体質強化を図るのか。

 「バブルで水膨れになった部分に大なたを振るうつもり。現在千二百五十人の従業員を二年後に千人体制にするリストラ計画を着実に進めるとともに、他行と比べて高い経費率にメスを入れる。価格はマーケットが決める、ということを自覚しなければならない。コストに利益を乗せたものが価格ではなく、市場価格からコストを引いたのが利益。いかにコストを下げるかが収益の源泉であり、それを価格に反映させてこそ競争力につながる。その公式をもっと徹底させたい」

 ―大株主の住友銀行の出身だが、今後、住友銀行との協力、連携を深めていくのか。

 「確かに三十年近く住友銀行に勤め、その後、住友グループのシンクタンク日本総合研究所に六年勤務した。将来、投資信託などの商品や業務を通じて他行や証券会社との連携などは考えられるが、あくまでも独立経営体として判断していきたい。住友側から見ても、滋賀県はそれほど縁のない地域。ここでリテール(小口取引)を展開しようとは考えていないだろう。びわこ銀行は、自主独立の地域金融機関として地道なリテールバンクを目指す」

 ―今回、頭取に就任することになったいきさつは。

 「私は東京生まれだが、戦時中、滋賀に疎開してきた。大学の半ばまで滋賀で過ごし、最も私の人生で影響を受けた地域でもある。今年二月ごろまでは、まさか銀行に戻るとは思わなかった。『風当たりの強い時代に』という思いもあったが、先輩に『風当たりが強いからこそやりがいがある』と勧められ、決意した。モットーの『人事を尽くして天命を待つ』の心境で努力したい」

(政経部 直野信之)

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