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京都地下鉄東西線・醍醐−六地蔵延伸 11月26日開通
広域的鉄道ネット形成 観光や沿線振興に期待

 京都市営地下鉄東西線の醍醐(伏見区)−六地蔵(宇治市)間の2・4キロが26日、延伸開通する。市営地下鉄が初めて京都市域外に到達し、JR奈良線、京阪宇治線と接続。広域的な鉄道ネットワークが形成される。京都、宇治両市からは観光や沿線振興に寄せる期待感も大きい。延伸により、東西線は二条(中京区)−六地蔵間15・1キロを貫く大動脈となり、都心部の交通混雑の緩和や大幅な時間短縮も見込まれている。


 ◆時間短縮や交通手段増加

試乗会を楽しむ大勢の参加者。京都、宇治両市を結ぶ東西線の延伸に、市民の関心も高まっている(20日、六地蔵駅)
 地下鉄東西線の六地蔵延伸開通は、到達時間の短縮と交通手段の選択肢増加という二つの効果をもたらす。

 まず、時短効果。新たに延伸する六地蔵−醍醐間の所要時間は5分、運賃は200円。従来のバス(10分、210円)に比べ時間は半分、運賃も10円安い。山科へは13分、230円で、現在のバスと東西線の乗り継ぎ(18分、440円)と比較しても有利だ。

 四条へは東西線、烏丸線と地下鉄を乗り継げば28分、290円。京都駅経由でJR、烏丸線を乗り継ぐ場合に比べて、所要時間はほぼ同じだが、運賃は100円安く済む。

 ダイヤは平日で133往復。朝のラッシュ時には約5分間隔、昼間帯でも約7−8分間隔で運行される。

 六地蔵でJR奈良線、京阪宇治線に接続することで、交通手段は多様化する。三条京阪へは東西線で直行できることになり、従来の京阪中書島駅経由と併せ、選択肢が増える。

 JR線と烏丸線を乗り継ぐ必要があった二条、烏丸御池方面にも、乗り換えなしで行くことが可能になる。



 ◆地元活性化へ歓迎ムード

初めて地下鉄が乗り入れる六地蔵駅周辺。JR線、京阪線と接続し、新たな交通の拠点となることが期待される
 初めて地下鉄が乗り入れる宇治市の六地蔵駅周辺は、商店街を中心に歓迎ムードに包まれている。一足先に完成した駅前広場では今月3日、オープンを祝う地域交流イベントが行われ、模擬店などが並んだ。

 六地蔵駅前のロクモール商店街(65店舗)では、延伸開通する26日から「得得セール」を来月12日まで開催、祝賀ムードを盛り上げる。関係者は「延伸は以前から要望していたので、実現してうれしい。厳しい商店街経営の希望の明かりになれば」と喜んでいる。

 その東側の御蔵山商店街(47店舗)も、全店舗でイルミネーションを施すほか、地下鉄車両の45分の1の模型を展示し、開通を祝う。

 眼鏡店を経営する小野和子さん(52)は「地の利を生かして、発展につなげたい」と意気込んでいる。

 宇治市と京都市交通局は26日から3日間、六地蔵駅構内に観光ブースを設置。両市の観光案内のほか、茶だんごなどの地元名産品、記念乗車券などを販売する。



 ◆駅施設はバリアフリー

市営地下鉄で初めて設けられる多機能トイレは、オストメイトや子供連れにも配慮している(石田駅)
 新たにできる石田、六地蔵の2駅は、すべての出入り口にエレベーターが設置されるほか、オストメイト(人工肛門などの保有者)も利用できる多機能トイレを初めて導入、バリアフリーにも配慮した。

 エレベーターは、両駅に四つずつある出入り口すべてに設けられる。東西線の他の駅と同様、入り口正面と両サイドの計3カ所に操作ボタンを設置し、体の不自由な人に配慮した。

 段差のある部分にはスロープを設け、地上からホームまで車いすで降りられるようにした。

 また、市営地下鉄で初めて設けられる多機能トイレは、人工肛門などを洗浄できる流しを備えている。

 5・8平方メートルのゆったりした空間に、男女兼用で、車いす用便座や、赤ちゃんのおむつを替えるベビーシートも備え、オストメイトや子供連れでも安心して利用できるようにした。

 市交通局では、駅のバリアフリー化に力を入れており、すでに全駅でベビーシートの設置や、エレベーターのボタンを3カ所に増設する工事を済ませた。今後は多機能トイレの順次設置に向け、検討を進める。



 ◆68年に建設構想打ち出す =地下鉄の歩み=

 京都市が、具体的な地下鉄建設構想を打ち出したしたのは1968年。急激な人口増加とモータリゼーションを背景とし、「市交通対策審議会」の答申に、現在の烏丸線や東西線などの建設計画を盛り込んだ。

 烏丸線は1981年5月29日、北大路−京都間(6・5キロ)が開通した後、路線は順調に南北に伸び続け、1997年6月3日には国際会館−北山間(2・6キロ)ができて現在の姿となった。また、その四カ月後には、東西線の醍醐−二条間(12・7キロ)が開通し、市内を東西に結ぶ動脈が誕生した。

 今回の東西線・六地蔵−醍醐間(2・4キロ)の延伸開通後は、2007年度中に二条−天神川間(2・4キロ)が完成する予定。さらに、市基本計画が掲げる烏丸線の南伸や東西線の洛西延伸も今年10月、国土交通相の諮問機関の「中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」に選定され、将来的に整備される可能性が高まった。

 地下鉄の年間旅客数は、烏丸線が約8400万人、東西線が約4300万人(03年度)に上る。1日平均で両線合わせて約31万人が利用しており、市民生活はもとより、国内外から訪れる観光客らの足として欠かせない公共交通となっている。

 ただ、巨額の地下鉄建設費の負担が、市交通局の経営を圧迫しており、03年度の累積赤字は、過去最悪の2191億円に達した。同局は、経費削減などによる健全化計画を実施中だが、累積赤字の完全解消には、今後30年以上かかるという試算もある。

 ◆年表      

 1972年10月24日 地下鉄烏丸線・北山―竹田間の鉄道事業免許を取得
   74年11月29日 烏丸線・北大路―京都間(6・5キロ)の起工式
   81年 5月29日 烏丸線・北大路―京都間が開通
   88年 6月11日 烏丸線・京都―竹田間(3・4キロ)が開通
        7月14日 東西線・醍醐―二条間(12・7キロ)の鉄道事業免許を取得
        8月28日 烏丸線で近鉄との相互直通運転を開始
   89年11月 8日 東西線・醍醐―二条間の起工式
   90年10月24日 烏丸線・北山―北大路間(1・2キロ)が開通
   92年 4月23日 烏丸線・国際会館―北山間(2・6キロ)の鉄道事業免許を取得
   97年 6月 3日 烏丸線・国際会館―北山間が開通
       10月12日 東西線・醍醐―二条間が開通
   98年 5月 6日 東西線・六地蔵―醍醐間(2・4キロ)の鉄道事業免許を取得
   99年10月19日 東西線・六地蔵―醍醐間の起工式
 2000年 3月15日 烏丸線で近鉄との相互直通運転区間を拡大
   01年 5月 9日 東西線・二条―天神川間(2・4キロ)の鉄道事業許可を取得
   02年12月12日 東西線・二条―天神川間の起工式
   04年11月26日 東西線・六地蔵―醍醐間が開通



 ◆新駅周辺紹介

外環沿いに集合住宅が建ち並ぶ石田駅周辺。地下鉄の延伸は、住民の利便性を向上させる
 ■石田駅 近くに法界寺や日野誕生院

 石田駅がオープンする京都市伏見区石田地域には、11月1日現在、約5600人が暮らしている。地域住民は、今回の延伸で生活の利便性が大きく向上すると、期待している。

 駅周辺には、団地が並ぶほか、総合病院や廃熱を利用した温水プールがある。

 駅から東へ徒歩で20分ほど行くと、1月の「裸踊り」で知られる日野の法界寺がある。

 平安時代初期、藤原家宗が薬師如来を祭ったのが始まりで、後に藤原氏一族の日野資業が薬師堂を建立して寺にした。日野薬師の名でも呼ばれ、安産や授乳祈願の寺で知られる。また、同寺近くには、浄土真宗の開祖親鸞が生まれたとされる日野誕生院もある。境内には親鸞の童形の像などがあるほか、産湯を使ったとされる井戸や、親鸞のへその緒を埋めたと伝えられる「ゑな塚」がある。

 伏見区石田や日野地区とも、地下鉄の延伸効果に期待して、分譲マンションや1戸建ての建設が相次ぎ、山すそに広がるのどかな町並みが変わりつつある。

 ■六地蔵駅 今も昔も交通の要衝に位置

 宇治市六地蔵の六地蔵駅は、市内の北の端にある。京都市伏見区と隣接し、JR奈良線、京阪宇治線と接続する府南部の玄関口だ。

 駅周辺には大型スーパーやホテルが並び、商店が軒を連ねる。平等院や万福寺などの名所が多い「観光宇治」にあって少し違った雰囲気がある。

 六地蔵には11月1日現在、約1600人が暮らしている。周辺の同市木幡や平尾台などの丘陵地は、30年ほど前から宅地開発が進んだ。最近は東西線の延伸に伴い、分譲住宅の売れ行きが好調だ。

 京都近郊の寺を1日で回る「六地蔵めぐり」で有名な京都市伏見区桃山町の大善寺が近くにあることから、六地蔵と命名された。

 山科の東海道へ通じる道や、京都と奈良を結ぶ奈良街道が交差するほか、かつては、近くを流れる川に淀川へ通じる港も設置されていた。今も昔も交通の要衝だ。

 JRか京阪電鉄に乗り換えれば、世界遺産にもなった平等院や、宇治上神社まで20分ほどで行ける。


平成16年11月25日、本紙朝刊に連載された特集記事です。