京都芸術センター(京都市中京区)で昨秋上演された「京都ビエンナーレ2003」の演劇公演『宇宙の旅、セミが鳴いて』。役者、作家、スタッフ一体の取り組みが高く評価され、文化庁芸術祭賞大賞を受賞した。

問われていた真価

 舞台は芸術センターが独自に主催した。核となった出演者も、3年がかりの取り組み「現代演劇俳優セミナー」の出身者と劇作家、制作者。まさに、京都の演劇の「今」が結実した作品だった。「うれしかったのと、正直ホッとしたのと…」。戯曲を手掛けた鈴江俊郎は本音を語る。
 オープンして4年。毎年10パーセントずつ予算が削減されていた。近年相次いだ関西の劇場閉鎖のように、いずれ切り捨てられるのではないか。そんな危機感が関係者の間に漂い、センターの真価が問われていたのだ。
 戦後、新劇の草分け的存在「くるみ座」を生んだ京都は、学生劇団も多い。現在活躍する作家、役者のほとんどは学生時代、演劇に触れている。80年代の小劇場ブームの波を受け、京都にも「そとばこまち」など人気劇団が生まれた。
 しかし、90年代のバブル崩壊の影響や娯楽の多様化で観客が激減、劇団の負担は増えた。公演数は減り、劇場の運営を圧迫した。悪循環が続く。小劇場・アトリエ劇研(左京区)の杉山準プロデューサーは「バブル期は一公演300人動員が普通 だったが、今は200人入れるのがやっと」。資金のない劇団は満足にけいこ場が借りられない。演劇の技術を高める余裕もなくなった。
 その中で開館したのが芸術センターだった。演劇人が行政に強く働きかけて実現した。劇団やダンサーにけいこ場を提供するとともに、俳優や制作者を育てる事業を展開する。ワークショップでも、演劇に縁遠い市民を導こうと試みる。

演劇のすそ野が狭い

 それだけにセンターは、京都の演劇全体の現状も正直に映し出す。開館以来、毎年6万人以上がセンターの事業に足を運んでいるが、その7割は女性。40ー50代の男性はほとんどいない。
 すそ野が狭いことが、根源的な問題だ。作家や役者、プロデューサーはもちろん、そして何よりも観客をいかに育てるか。  
 仕事を終えてから劇場に立ち寄り、お年寄りや中高生でも気軽に足を運んでもらう。これまで演劇に触れたことのない層へのアピール、取り組みが重要だ。
 受賞は兆しだ。芸術センターが生みだした観客や作り手が、劇研やアートコンプレックス1928など市内の他の劇場に広がりつつある。そんな活発な循環ができれば、演劇界は再び、熱を帯びるはずだ。

★市民の芸術文化に対する意識・活動状況アンケート結果 から
 (対象は20歳以上の3000人、複数回答。2002年度京都市実施)。
  おもな設問の最多回答は次の通り。
どのような条件が整えば芸術文化活動をもっと行ってみようと思うか
(1)時間的な余裕があれば 49.9%
(2)経済的な余裕があれば 39.2%
(3)身近に施設や活動場所があれば 38,8%
(4)興味を引く芸術文化に出会えば 31.7%
(5)気軽に参加できる催しがあれば 27.3%
男女別では、「時間的な余裕があれば」と答えた人は男性が52.2%で女性の50.1%を超え、その他項目ではいずれも女性が男性を上回った。

写真上=元明倫小学校の芸術センターの空き教室は、劇団のけいこ場に変身する。毎日、夜遅くまで、劇団員たちの声が響く。

 
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