20年来の映画ファン、正木美代子さん(京都市右京区)は最近、大阪に行く回数が増えた。時には東京にも出かけた。京都では、見たい映画がなかなか上映されないからだ。

 派手なアクションが売りの大作は好きではない。世界各国の心に染みる作品が見たい。情報はネットや雑誌で入手する。公開後の評判も東京から届く。しかし「京都では公開の有無さえ分からないことが多いんです」。相次ぐシネコン計画にも「多くの種類の映画が見られるとは限らない」と冷めた感想だ。

来夏に上映場倍増へ

 現在、京都市内の映画館は13館(22スクリーン)。東宝や松竹のシネコンや京都シネマが出そろう来年夏は16館(同41)になり、スクリーン数は倍増する。だからといって、上映される映画の種類が倍になる訳ではない。

 シネコンの最大の特長はスクリーン数の多さを生かした機動的な上映だ。MOVIX京都(同7)の場合、アカデミー賞を独占した「ロード・オブ・ザ・リング王の帰還」を1日最大16回上映した。この影響で、上映する映画は1日5種類、うち一作品は朝1回のみ上映の日もあった。

 シネコンが日本に登場して10年。設備面でも優れた新しいタイプの映画館は確かに、日本の映画人口を増やした。昨年、興行収入は過去最高の2032億円を記録した。だが、好調を支えるのは実は一握りだ。昨年、約600本が国内公開されたが、「踊る大捜査線2」など上位 10本で興収の4割以上を占めた。

大作以外は苦戦

 映画会社や出資元のマスコミが大量 宣伝する大作以外は依然、逆境が続く。大作に押され、映画はあるが上映できない。逆に「予算がなく、フィルムが1本しかない映画も。東京での上映が終わらないと他都市に行けない映画もある」(映画関係者)。京都の興行は今、劇場を占拠してロングランを続ける映画と、結局見られなかったり、短期間で終わる映画に2分されているのだ。

 京都朝日シネマ閉館後、アート系上映の中心的な役割を担う京都みなみ会館(南区)は昨年、一スクリーンで約300種類(旧作、短編含)を上映した。「公開が遅い、上映の組み方が複雑で見にくいという声はある。だが、多少不自由でも、多くの映画を見て欲しい」という思いからだ。

 「シネコンと、作品選択にこだわる映画館の両立が望ましい」と佐藤英明代表は願う。来年夏、京都の映画を見る環境は改善されるだろうか。映画ファンの正木さんは言う。「大阪や東京からも人がやって来る映画館が出来てほしい。街の雰囲気といい、京都にはきっとそれができるから」

写真上=シネコンは、ヒット作を複数のスクリーンで上映できるのが特徴。待ち時間少なく鑑賞できるが、ほかの映画の上映には影響する(京都市中京区)

 
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