高瀬川沿いのネオン街はかつて、問屋街だった。町名に残るばかりで、今はそんな風景もあまりお目にかかれない。が、古くからのスタイルを変えない店々がしぶとく生き抜き、木屋町に深みある魅了を作り出している。
 西木屋町通りの古民家に「数奇屋照明電気材料大卸 タチバナ商会」の大看板が掛かる。店を構えてから75年。店内からは1000点もの照明器具のやわらかい光が通 りに漏れ、道行く人を引き付ける。3代目店主の佐藤さんは30代半ばだが、骨董市などで買い付けた照明を修理し販売する。「何十年も前の照明器具が残り、また誰かの手により使われるのは奇跡みたいなもの」「デザインや細工にも当時の生活をしのばせる物語があり、見つけるのが楽しくて」。「ものへの愛着」がにじむ店は、せわしく行き交う木屋町と好対照だ。
 「タチバナ商会」からちょっと下がると格子窓の日本家屋が目に止まる。暖簾には「れんこんや」。何を商う店なのか、暖簾をくぐり尋ねる人もいるとか。半世紀を超える「京の家庭料理の飲み屋」は、音楽家や俳優らも顔を出し、作家の故・司馬遼太郎さんらも常連だったという。3代目女将伊藤美紀さん(39)は「先代から継いだ店を大事に続けているだけです」。
 ところは変わって、四条通近く。雑居ビル内の飲み屋「八文字屋」は書籍が山積み、写 真が散乱する。「開店当時からこんな感じ」と写真家でもある店主の甲斐さん。高瀬川沿いには、喫茶「ソワレ」は55年間、青い照明とブドウの彫刻など変わらぬ 神秘的な内装で出迎える。
 木屋町には、異彩を放つ店が今なお残る。