食事やお酒を楽しむだけが、木屋町の魅力ではないようだ。
 細く、少し暗い路地は、自分だけの隠れ家。そんな気がする。ブルーノート。その扉を開けば、流れるようなジャズが、体の中に溶け込んでくる。平日は静かに響くその音楽に耳を傾け、週末は生バンドの奏でる「ホンモノ」に、心が震える。先代ママの跡を継ぐチューパーさんこと大東久夫さんは「ジャズは難しくない、自由に合わせて楽しむだけ」と、微笑んだ。
 エンパイヤビル5階、エレベーターを降りれば、扉の隙間から音が漏れる。京都でバンドをする者が一度は憧れるライブハウス「RAG」。様々なジャンルのバンドが訪れては、この店を熱くする。耳に飛び込む、その音に思わず体が動き出す。「出演者とお客様が共にライブという場を創り上げる場でありたい」。店長の松尾小百合さんは、毎夜行われるライブを見守り続ける。雑居ビル2階。「クラブ・コラージュ」。そこに行けば誰かに会えるそんな気がする。手の届きそうなDJブース。フロアに響く音が熱を帯びる。木屋町で働く若者たちが、ここでイベントを行うことも多い。
 「ワールド」。7月で2周年を迎えたこのクラブは、木屋町に新しい文化を発展させようとしている。この町には珍しい広い店舗に、東京や大阪などで活躍するアーティストを呼ぶ。目まぐるしく変わる、赤や黄色のライト、壁に映し出される映像、体の芯まで響くような音が、非日常の世界へ誘う。店長の廣田力さんは大阪出身。「京都をポップに、そしてもっと、熱くさせたい」と、様々なイベントを打ち出す。その波に乗るように人が集まる。
 音楽は世代を越える。そして、それを提供する店には、不思議な出会いを予感させる。好きな音楽に合わせて体を揺らせば嫌なことも忘れるだろう。静かに耳を傾ければ、忘れてた何かを思い出すかもしれない。 そして今日も、木屋町に人は溢れる。