夜。若者たちは集まって談笑し、客引きは酔客を呼び止める。ネオンが毎夜、映し出す雑踏のなか、声をからしブルースを歌う街角のギター弾きが真橋にいる。もう3年も続く「木屋町の風景」の一部だ。
 山本祐一さん(26)で、仕事帰り疲れていても必ずここにくる。歌うのは「山崎まさよし」とオリジナル曲。「ここで歌えばストレートに何かが、伝わるような気がして。お金が欲しいんじゃない、単純に誰かに聞いてもらいたい」といい、話が終わるとまた歌い始めた。
 すぐ近くには手相をみる鑑定士が座っていた。こちらはもう30年という。静かな姿で、変わらず町を見続けてきた。「今の人は何かに追われるよう。桜もこんなにきれいなのにねえ」。今年も町を彩った桜を見上げていた。
 早朝、人が消えるとカラスがゴミをあさり出す。夜の抜け殻のような町に、新聞配達の自転車が走った。木屋町にまた新しい息づかいがやってきた。