女性ランナー 新時代への提言
小出義雄さん(積水化学女子陸上部監督)


 結果が重要 自己責任で



 −指導する高橋尚子がシドニー五輪マラソンで優勝し、日本の女子長距離が世界のトップに立った。

 「僕は駅伝でレベルアップしたと思っている。駅伝やクロスカントリーが各地にでき、日本中で女子長距離に対する関心が高まった。外国人選手を招待するレースが増えたことも大きい。ケニアやエチオピアの選手に対しても『やればできる』という感覚が選手や監督に出てきた」

 −なぜ金メダルを取れたのか。

 「昭和40年から23年間、高校駅伝で優勝したくて男子を指導してきたが、私は金メダルが欲しかったんです。だから、これから女子の時代が来ると思って女子の指導も始めた。金メダルを取りたくて一生懸命やってきた。僕は自分で指導者だとは思っていない。好きな陸上やらせてもらってありがとうっていうふうに自分のためにやっている。自分の生き方をしたその先に金メダルがあった」

 −日本の女子長距離はどこまで伸びるのか。

 「何10年か先には、2時間を切る時代が来てもおかしくない。やってやれないことはない。金メダルなんて取れるわけがない、ではなく、金メダル取るにはどうしたらいいか。クリスチャンセン(ノルウェー)が1985年に2時間21分台で走った時は、すごいと思った。でも2時間20分を切るにはどうしたらいいか考えた。高橋がまだ2時間30分台のころ『20分切れるぞ』と言ったら高橋は首をかしげた。でも『おまえだったら切れる』と言い続けた。走れると思わなければ。高橋はもう一度、世界記録を狙います」

 −日本の陸上界に足りないことは。

 「秀でた選手をきちんと評価すること。マラソンで世界一になったらそれだけの評価が必要。ご苦労さんだけではだれもスポーツはやらない。野球選手だけが何億円ももらっていたのでは駄目。サッカーもプロを作って強くなった。その点が陸上界に欠けている」

 −世界のトップを維持するために大切なことは。

 「大人が夢と希望を与えてやること。だから、高橋をテレビや雑誌に出している。高橋にはいつも『夢をはぐくめるのはおまえだよ』って言ってきた。高橋にはうんとお金を稼いでほしい。選手がいい思いしなければ意味がない。人材を集めるのはお金。実業団だってメリットがあるからやっている。もっとすそ野を広げるにはどうしたらいいか、再検討する必要がある」

 こいで・よしお 順大卒。市船橋高教諭などを務めた後、リクルート監督として有森裕子、鈴木博美、志水見千子らを育て、1997年から積水化学監督。第12回全国女子駅伝で千葉県監督として優勝。


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