女性ランナー 新時代への提言
帖佐寛章さん(日本陸連副会長)


 1万メートルのスピード磨け



 −昨秋、高橋尚子(積水化学)がマラソンの世界最高記録(当時)をマークした。

 「まず小出義雄監督の指導力を評価したい。高橋さん自身も指導者以上に目的意識を持って臨んだ結果だと思う。高地トレーニングはだれでも効果が出るわけではない。過酷な練習に挑んだ意欲が好成績につながった。高橋さんは元々、無名選手だった。五輪マラソンで連続メダルをとった有森裕子(リクルートAC)さんも同じ。無名でも一流になれることを実証したことが、今後のランナーに自信になる」

 −日本の女子長距離のレベルは。

 「マラソンは質量ともに世界ナンバーワンだろう。トラックに強いケニア、エチオピアを含めてもAクラスに入る。ここまで伸びたのは指導者の研さんが大きい。ジュニアから企業までしっかりと取り組み、選手と指導者がマンツーマンで目標を達成してきた」

 −これからの展望は。

 「当面の目標は2年後のアテネ五輪のマラソンになるが、マラソン世界最高を出したヌデレバ(ケニア)、一万メートルの世界記録を持つツル(エチオピア)らは現在、29歳前後で3年後が最も充実している。一万メートル、ハーフマラソンにも強い彼女らのスピード、持久力に太刀打ちするのは容易じゃない。一万メートルやハーフの力が即、マラソンにつながるわけではないが大きな武器だ。だが、一万メートル、ハーフで世界レベルに近づくことが重要なのに、日本は逆に遠ざかりつつある」

 −アテネ五輪に向けた戦力は。

 「現在でも期待できる人材は何人かいる。マラソンでは入賞の8位以内に出場3人のうち2人が入れるだろう。ただメダル、それも金となると簡単にはいかない。まず一万メートル、ハーフで世界レベルに入るスピードを付ける必要がある」

 −全国女子駅伝が果たす役割は。

 「女子駅伝とマラソンは相乗効果がある。この駅伝があったからこそ、マラソンが予想を超える早さで世界レベルまで急成長した。世界で活躍した選手も2年に一度はこの駅伝に帰って来てほしい。大会に集まる全国のジュニアは一流選手を見つめている」

 −選手に望むことは。

 「これだけ幅広い選手がそろう大会はない。中学、高校、一般と一体となってこの駅伝を盛り上げてほしい。日本の長距離の飛躍がかかっている」(おわり)

ちょうさ・ひろあき 東京教育大(現筑波大)卒。1953年日本選手権八百メートル、千五百メートル優勝。日本陸連専務理事などを経て現在、副会長。日体協でも理事、国体委員長などを歴任。元順大教授。


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