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- 2019元日 文化人メッセージ -

武田双鳳

「やわらかさ・あつさ・おおきさ」
和の文化の「佇まい」をいま

武田双鳳
書道家

「かたさ・うすさ・ちいささ」。これが、今の日本人の書き方の特徴のように感じる。「かたさ」とは、活字のような四角さ。いわゆる「まる字」でも、文字全体のフォルムを正方形に収めてしまう。「うすさ」とは、線質の浅さ。本来の「書く」は、石などを「刻む」ことに近いはずなのに、「ぬる」「なでる」「押し付ける」ことばかり。「ぬる」「なでる」では線は薄く、「押し付ける」と表面的にしか濃くならず、道具も身体も痛めてしまう。「ちいささ」とは、運筆の窮屈さ。特に、右上がりの線の不得手が多い。足腰からの旋回運動を起こせず、手先に仕事をさせすぎ、細やかな角度の調整ができない。
書き方は、日常動作の無自覚の癖をも映し出す。書き方の特徴は、現代人の動き方にも当てはまるだろう。
例えば、歩き方。膝の「かたさ」故に、腰に負担を掛ける。座り方。肩甲骨の「うすさ」(存在のなさ)で、猫背になる。その「かたさ」「うすさ」故の呼吸の「ちいささ」で、疲れやすい。もちろん、全員に当てはまるわけではないが、「かたさ・うすさ・ちいささ」故に、心の「むなしさ」が拭えない人は少なくないだろう。
それに対して、「和の文化」を築いた平安人の動き方はどうだろう。例えば、平等院鳳凰堂の阿弥陀如来。観れば感じるだろう。西洋の彫刻と異なる、その佇まいの「やわらかさ・あつさ・おおきさ」を。
触れると、ふわっと指が入りそうな「やわらかさ」。中は水じゃないかと思うほど、力みがなく滞りがないのに、どしっと安定した「あつさ」。その「やわらかさ」「あつさ」故に、世界を包み込むような存在の「おおきさ」。
平安の書にも、彫刻と同じ特徴が表れる。例えば、嵯峨天皇の書。横画や縦画のしなりなどから、素人でも、中国と異なる和様の「やわらかさ・あつさ・おおきさ」を感じるだろう。
なぜ、平安人の書や彫刻と比べて、現代人の書き方や動き方に、このような不自然さが表れるのだろう。それは急激なグローバル化によって、日本人に備わる身体感覚とは不釣り合いな生活様式になり、まるでサイズの合わない靴を履かされたように、身心が「立たず舞えず」の状態になってしまっているからではないだろうか。
満たされているはずなのに満たされない。そんな日本人に合うサイズとは、どのようなものなのだろう。京都に根付く和の文化の「佇まい」は、その大いなるヒントを提示しているように思えて仕方がない。

◉たけだ・そうほう
1977年、熊本県生まれ。龍谷大卒。3児の父。師匠は書道家の母・武田双葉。兄は双雲、弟は双龍。修学旅行で一目ぼれした京都に住み始めて20年。行政書士・社会保険労務士有資格者。アーティストとしての活動や全国各地で講演会も行う。京都と大津で主宰する書法道場には、全国各地から門下生が集う。