特別展「フルーツ&ベジタブルズ 東アジア 蔬果図の系譜」
泉屋博古館
目で味わう秋
とれたての新鮮野菜、たわわに実った果物、秋の収穫。有史以来、人は自然の恵みへの感動と喜びを絵にしてきた。京都・錦小路の青物問屋主人だった伊藤若冲をはじめ、日本人絵師たちも多様な「蔬果(そか)図」を手掛けた。そんな大地の恩恵を描いた絵画を紹介する特別展「フルーツ&ベジタブルズ」が3日、泉屋博古館で開幕する。


蔬果図の源流は、中国・宋代。丸々と太った果実の生命力は子孫繁栄、吉祥の表象へつながり、泥土の中で育っても清廉な色や形を見せる蔬菜は、高潔なイメージを連想させる。蔬果図は、中国から朝鮮を経て中世日本に伝わった。同展は、そうした野菜果物画51点が集結する。
江戸中期、京の町で2人の絵師が長大な野菜絵巻を描いた。1人は若冲、もう1人が呉春だ。若冲「菜蟲譜(さいちゅうふ)」(重要文化財)は10メートルを超える画面に、約100種類の野菜や果物が楽譜のようにリズミカルに並んでいる。この若冲の絵に触発されたらしいのが、呉春だ。美食家の呉春は、京都近郊でとれた京野菜をモチーフに「蔬菜図巻」を描いた。流れるような自由な筆遣いで、野菜たちが精彩を帯びる。若冲とはひと味違う情趣を見せる。

江戸時代 京都国立博物館蔵
11月22日~12月9日展示

初公開の富岡鉄斎「野菜涅槃(ねはん)図」もみどころ。釈迦(しゃか)に見立てた二股大根の臨終に、さまざまな野菜たちが集う。「最後の文人」と呼ばれた鉄斎らしい奔放な筆致が楽しめる。関連が指摘される、若冲晩年の大作「果蔬涅槃図」(同)も出品する。
ほかにも元代の「草虫図」(同)、日本最古のトマトのスケッチといわれる狩野探幽「草花写生図巻」、円山応挙「筍(たけのこ)図」、雪村周継「蕪(かぶ)図」など盛りだくさん。味覚の秋は、目でも味わいたい。
当ページの記事や写真等は転用を禁じます。
京都新聞に掲載された記事や写真等の著作権については、京都新聞社または情報提供者、原稿執筆者にそれぞれ帰属します。
ネットワーク上の著作権について 新聞・通信社が発信する情報をご利用の皆様に(日本新聞協会)