The Kyoto Shimbun

優秀な生徒確保へ京都府内公立高が争奪戦 「入学者が進学実績を左右」
社会報道部・有賀美砂

 2006年度の入試に向け、府内の公立高校では中学3年生の争奪戦が早くも水面下で始まっている。04年度入試から山城地域の通学圏が統合されたのに加え、府内全域から生徒を募集する「専門学科」が来春、一挙に4校で新設されることも競争に拍車をかけそうだ。志望校の選択が広域的になるのに伴い、中学校の進路指導以上に進学塾のデータが重視され、高校側も塾への売り込みを強めざるを得ない。「入り口(入学者)で出口(進学実績)が決まってしまう」という、高校側の本音が背景にあるようだ。

専門学科が新設される各高は、優秀な生徒を集めようとホームページなどでPR
将来の「実績」PRも
 三田紀房氏の人気コミックを原作にしたテレビドラマ「ドラゴン桜」が最近、府内の公立高関係者との会話に登場するようになった。元暴走族の貧乏弁護士が「偏差値36」の私立高生を東京大に入れることで、学校の経営難を救おうとする物語。「東大合格者を出せば優秀な生徒が自然に集まる」という現実を逆手に取った痛快さと、「落ちこぼれ」の高校生が東大を目指す劇画ならではのドラマ性に、面白さがある。

 今月、八幡市内で開かれた「八幡高校・南八幡高校合同説明会」を取材をした際、ふと「ドラゴン桜」が思い出された。両校は07年度に統合を予定しているため、06年度入試に向けた各校のPRに加え、統合校の方向性について説明する場でもあった。

 会場の空気を変えたのは、校長のこんな言葉だった。

 「東大、京都大、大阪大という超難関大学に、現役で進学できるようなシステムを校内につくる。こういう希望を持つ生徒への個別指導を進められるよう準備中です」

 両校からこれまで三大学への現役合格者は出ていない。それでも、将来の「実績」を公言する狙いはどこにあるのか。その校長は「府内全体の京大の現役合格者数は昔からそれほど変わっていないはず。同じパイの中から優秀な生徒をどれだけ集められるかで、高校の進学実績が決まる。それが現実」と話した。

来春4校に専門学科
 02年度の大学入試で、堀川高の専門学科第1期生6人が京大に現役合格し、「堀川の奇跡」と呼ばれたことは記憶に新しい。ただ、関係者は「入学した生徒の学力レベルから見れば奇跡でも何でもない。そういう生徒が入学する学校に変えたことが奇跡だった」と振り返る。

 来春、府立高4校に専門学科が新設される。そのうち1校の教頭は「これまで堀川高や嵯峨野高、西京高に集中していた層を、われわれの力でどこまで分散させることができるか。中学校への説明はもちろんだが、今や進学塾への売り込みが不可欠だ」と話す。

 府南部の進学塾が9月中旬に開く入試相談会には、私立高だけでなく、専門学科を置く(設置予定も含め)堀川、西京、嵯峨野、南陽、桃山の公立高5校の入試担当者らが初参加する。

 府内全域から優秀な生徒を獲得しようとする公立高間競争は、塾を巻き込み、さらに過熱しそうだ。

 大阪府立高などに見られる、偏差値による「輪切り」は京都でも加速するだろう。ただ、学歴社会そのものが揺らいでいる中で、生徒や保護者には、高校を別の角度から評価する視点が必要だ。府内の公立高にも、進学実績だけにとどまらず、長期的な視野に立った多様な情報発信をする工夫が求められるだろう。

[京都新聞 2005年8月19日掲載]

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