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未来にらみ高校と連携 サンガが人材育成新プロジェクト 文化報道部・後藤竜介

 サッカーJリーグ1部(J1)の京都パープルサンガと学校法人立命館、京セラの三者が連携して、ユース選手を育成する「スカラーアスリート・プロジェクト」が4月からスタートした。プロジェクトで入団する高校生年代(U−18)の選手は全員、立命館宇治高に入学し、学費免除、全寮制の中で才能を伸ばすエリート教育を目指している。将来、海外でプレーすることを考えて英語教育に力を入れるなど学業との両立も図る。幅広い視点から人材育成を狙う、Jリーグクラブでは初の試みだ。

 第1期生として入団したのは8人。実技セレクションには海外からの参加者もあり200人以上が受験した。合格するには実技だけでなく、立命館宇治高が行う作文のテストと内申書評価にもパスしなければならない。

新設された人工芝のピッチで練習する京都パープルサンガユースの選手たち(城陽市・サンガ東城陽グラウンド)
恵まれた環境面
 環境面は恵まれている。学費が免除されるほか、1月には学校に近いサンガの東城陽グラウンドにナイター照明付きの人工芝ピッチが完成。11月には京セラが造った新しい寮も完成する。選手は学校、寮、グラウンドの間を自転車で行き来できる。サンガ育成部の上野展裕ディレクターは「Jクラブの中で最高の育成環境」と胸を張る。

 立命館宇治高の川崎昭治校長は「スポーツ選手は従来、スポーツか学業かの二者択一を迫られたが、ここでは両方追求する」と期待を込めて話す。卒業時にプロ入りしなかった場合は立命館大へ進学可能なのも、高校生や保護者には魅力だ。

 「早くプロで通用する選手に」と第1期生が入団して4カ月。上野ディレクターは「子どもたちが最近ようやく落ち着いてきた」と明かす。初めて親元を離れた寮生活。ユース年代の中では最も年齢が低いため、対外試合では体格や経験の差から通用しないことも多い。「エリート」と注目されるプレッシャーを背負い、生活が乱れかけた選手もいたという。上野ディレクターは「監督たちにしかられて人間的にも育てばいい」と、生活面の指導も重視している。コーチ陣は、昨年までに入団し、異なった条件でプレーする2、3年目の選手たちとの融和にも気を配っている。

クラブ間で競争
 サンガがユースの育成に力を入れ始めたのは、Jリーグのクラブ間で小、中学生世代の有望選手の獲得競争が激しくなったからでもある。関西ではガンバ大阪に優秀な選手が集中しがちで、今季、ガンバ大阪のユースからトップチームに昇格した選手は6人いたのに、サンガでは3年連続で昇格選手がゼロだ。

 日本サッカー協会も今季から福島県と連携し、選手が地元の全寮制の中高一貫校に通う「JFAアカデミー福島」をスタートさせた。「リーダーの育成」を目標に掲げて勉強や人格教育にも力を入れており、サンガのプロジェクトと共通の狙いを持っている。

 プロジェクトの中で、将来のサンガのエースや日本代表選手をどう育てていくのか。ユースからプロになれるのは多くて1、2割程度。クラブの主力選手になるのはさらに絞られ、厳しい競争の世界だ。サンガの阪倉裕二・U−18監督は「努力を怠るとただの夢で終わる。勘違いさせないよう心身を厳しく指導しなければ」と強調する。恵まれた環境の中で、選手たちがいかにハングリー精神を保ち続けるかも課題だろう。新たな試みからは、これまでと違う個性的なプレーヤーが育つ可能性がある。未来をにらんだ人材育成に期待したい。

[京都新聞 2006年8月2日掲載]

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