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在日無年金者 国籍ゆえの除外 解決に道筋を

社会部・本田貴信
「めざす会」の発足集会で、在日無年金問題の解決を手話で訴える聴覚障害者の金洙榮さん(京都市南区)

 国民年金制度から外れた無年金の在日コリアンの障害者や高齢者が、野党時代、問題解決に前向きだった民主党政権に法的救済への期待をつないでいる。これまで司法で敗訴確定が相次ぎ、政治交渉でも進展がなかった。国籍ゆえに年金制度から除外された現状に国際社会の批判もある。当事者の思いに、政治が向き合う時ではないだろうか。

 「いまだに残る制度的差別の象徴」「無年金のまま当事者がどんどん亡くなっている。時間がない」。先日、京都市南区であった「在日無年金問題の解決をめざす会・京都」の発足集会で、出席者からは民主党政権への訴えが相次いだ。

 1982年、国民年金制度の国籍条項撤廃で外国籍住民も国民年金に加入したが、受給資格は年齢で限定された。現在も在日コリアンで48歳以上の障害者と83歳以上の高齢者は受給できていない。政府は、本土復帰した沖縄、小笠原の住民や中国帰国者へ無年金状態とならない措置をとり、日本国籍の学生無年金障害者などを救済したが、在日外国人へは対応がない。

 京都の障害、高齢無年金当事者は憲法などに違反すると裁判を起こしたが敗訴が確定。立法府の裁量を認め、合憲とする司法の判断を受けた。元原告や支援者が結成しためざす会の共同代表に就いた元原告、金洙榮(キムスヨン)さん(57)=上京区=は「これまで司法も政治も壁が厚かったが、政権が代わった。何とか今後も頑張りたい」と会場で訴えた。

 2歳で聴力を失った。亡くなった母も聴覚障害者の妻(55)も無年金だ。40歳まで西陣織の下請けで生計を立てたが、業績不振で廃業。建設作業員や警備員になったが勤務先の倒産もあり職場を転々とした。障害で就ける仕事も限られる。今はホテルの清掃のパートで週5日働く。時給は800円。妻もパートに出、府と市の特別給付金を足して2人の子どもを養う。

 「働けなくなった途端に生活が回らない。安心して暮らしたい。日本人と平等の保障がほしい」と金さんは語る。

 集会には高齢者裁判の原告だった高五生(コウオセン)さん(88)=南区=の姿もあった。14歳で戦前の日本へ来た在日1世でカタカナしか読み書きできない。借家の一人暮らしで、月7万円の生活保護費が唯一の収入源だ。

 国民年金には制度上、保険料を払うことさえできなかった。「日本人と軒を並べ、住民の一人として生きてきた。義務を果たし、貢献もしてきた。尊厳を回復するために『年金の権利』を求めて声をあげきたのだが」と、今後の進展を見つめている。

 民主党は野党時代、在日外国人を含めた無年金障害者の救済法案を提出、「次の内閣」の担当大臣が無年金問題解決への意欲を談話で発表するなど前向きな姿勢を示した。当事者や支援者が希望をつなぐ根拠だ。2008年には国連人権規約委員会が日本に、無年金の在日外国人へ救済措置を講じるよう勧告した。

 めざす会の顧問で元京都市外国籍市民施策懇話会座長の仲尾宏さん(73)=大津市=は「日本国籍者には救済措置がある一方、同じ住民として日本に暮らす在日が無年金のまま放置されるのは筋が通らない」と、解決への「政治責任」を強調する。「政権交代した今が、唯一最後のチャンス」とも言葉を重ねた。

[京都新聞 2010年2月23日掲載]

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