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南草津図書館の民間委託 利用者に不安 役割議論を

湖南総局・加藤秀生
草津市が指定管理者制度を導入するとしている南草津図書館。コスト計算で語れない施設の役割に目を向けたい

 草津市が2011年度から南草津図書館(野路1丁目)に指定管理者制度を導入し、管理運営を民間委託するとしている。市は、同制度の導入を機に効率的運営とサービス向上を目指すとしているが、同図書館は子どもの読書活動に優れた取り組みを実践し本年度の文部科学大臣表彰を受けた。積み上げた成果を無駄にせず、コスト計算だけで語れない図書館の役割に、いま一度目を向けてほしい。

 市は昨年12月、初めて実施した事業仕分けの対象に同図書館を取り上げ、「民間委託の拡充、市民との協働」との判定から指定管理者制度を導入する方針を決めた。導入すれば、京滋の自治体で初のケースとなる。橋川渉市長は「指定管理制度が提案されたのを機に、図書館の役割を見直し、今の時代にふさわしい姿を構築したい」と話す。

 この方針が利用者たちには唐突に映った。「無料で利益を求めない図書館に指定管理者制度はなじまない」と声を上げ、「草津〈わたしたちの図書館〉を考える会」を結成した。導入に反対する姿勢をみせ、市直営の継続などを求めている。

 市は6月定例議会で、民営化を決定づける同制度設置の条例改正案の提出をいったん見送った。市教委を中心とした検討委員会で本館の市立図書館(草津町)と合わせた2図書館の在り方を考え、年内に方向性を示すという。

 しかし、利用者の不安や不信感はぬぐえていない。「考える会」は、検討委のメンバーに市民参加や協議内容を公開とすることなどを望んでいるが、市教委は「予算措置のない庁内の委員会。7、8月ごろに利用者や市民グループを招き、声を聞きたい」と答えるにとどめている。

 同制度の導入で職員が入れ替わり、サービス内容が変わることへの不安も大きい。南草津図書館は司書資格を持つ職員の割合が高く、08年度は専任や嘱託らを含めると約85%。日本図書館協会がまとめた全国平均の49・0%(08年度)をはるかに上回る。

 貸出冊数も人口10〜15万人の自治体の分館レベルでは全国1位(同)を誇る。開館当初から力を入れてきた児童書は約14万8千冊と全体の30%近くを占めた。職員や市民ボランティアらによる長年の読み聞かせ活動などが評価され、文科相表彰につながった。

 「考える会」メンバーの後藤喜冶子さんは「図書館を民間委託し契約団体が利益を得るには人の削減か劣悪な条件の労働者を増やすしかない。市直営でサービスを改善する方法はあるはず」と訴える。

 図書館法は地域や学校、家庭の教育への奉仕を求めている。民営化ありきで方針を進めず、市民と築いた生涯学習拠点である南草津図書館の役割を、利用者らを交えて議論することが求められている。

[京都新聞 2010年6月16日掲載]

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