The Kyoto Shimbun
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無許可ゲストハウスの観光活用在り方、議論を

社会報道部・辻智也
無許可で営業しているゲストハウスの共用スペースと客室(右)。町家を改装しており、外国人や女性の人気が高いという(京都市内)

 ゲストハウスなどと呼ばれる格安の宿泊施設が京都の観光客に人気を集めている。一方で、旅館業法に基づく許可を取らない施設もあり、京都市内では少なくとも7軒の無許可営業が明らかになった。防火や耐震の観点から無許可施設が増えるのは問題だが、外国人観光客たちの根強い人気や町家活用の側面から、こうした宿の在り方を議論する必要性を感じた。

 ゲストハウスとはどんな宿だろう。京都市内の築100年以上の町家を改装した宿に一泊した。チェックイン時、宿泊者名簿の記入は求められず、料金の5千円を支払う。建物と部屋の鍵を渡され、6畳半の客室に案内された。

 経営者の男性(45)は「町家を生かした仕事をしたい」と、改装費が少ないゲストハウスとしての活用を思い立った、という。4年前に開業したが、営業許可はない。客室は計4室あり、炊事場やシャワーなどを宿泊者が共同で使う。経営者は間もなく外出し、一晩中不在になった。館内でのトラブルや火災発生時など危機管理には不安を感じたが、気ままな時間が過ごせ、風情ある町家に泊まるのは新鮮な感覚だった。この日の宿泊客は2人だけ。今回、会話する機会はなかったが、多くのゲストハウスには共用スペースがあり、宿泊客同士の気軽な交流が楽しめるという。

 旅館業法で定める宿泊施設の営業は、安全面から建築基準法や消防法の基準を満たすことが必要で、住居専用地域では営業できないなど立地も限定される。冒頭のゲストハウスは、宿泊施設の営業ができない地域にあり、市側から閉鎖を求められている。経営者は「営業できない地域だと知らなかった。法律に反して営業しようとは思っていない」と話す。

 なぜ、無許可営業の宿泊施設が増えるのか。「許可制だと知らなかった」「手続きが分からない」−。市が2009年4月から今年1月上旬までに指導した無許可の宿泊施設19軒ではこんな理由が多かった。中には耐震費用や許可取得の経費を嫌がり、違法営業する業者もいるという。

 観光や旅館ビジネスに詳しい立命館大経営学部の石崎祥之教授は「町家風ゲストハウスなどが外国人観光客らの人気を集め、開業希望も増えているが、許可取得手続きの煩雑さに加え、立地面は規制が厳しい面もある」と指摘。その上で、「開業相談窓口を設けたり、町家保全の面から住宅地でも開業できる特区を作っては」と提案する。

 正規のゲストハウス関係者からは「あまり規制緩和されると、まじめに防火設備などを設置してきた業者は報われない」との声も聞こえるが、住宅地に空き家が増える中で宿泊施設への転用は有効な対策でもある。取材したゲストハウスでは近所を散歩する宿泊客が高齢の住民と立ち話をして「にぎやかになった」と喜ばれているといい、地域で一定の役割を果たしているように感じた。

 格安の宿泊施設が増えてきたのは10年ほど前から。京都では新参の宿だが、外国人観光客の増加を目指す京都市にとって悪い話ではない。京観光の仕掛けの一つとして、業界を育てる観点から具体的な検討を進める時期に来ているのではないか。

[京都新聞 2011年1月19日掲載]

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