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介護する家族への支援 孤立化防止へ充実急げ

社会報道部・山本旭洋
「男性介護者のつどい」に集まった男性たち。悩みを語り、体験談や情報交換を通じて交流を深めた。必要とする支援はさまざまだ(1月13日、京都市中京区)

 自分の時間をあきらめる。仕事を辞めざるを得ない−。

 介護に追われる家族の声に耳を澄ますと、介護する人への支援が不十分な現状が浮かぶ。介護疲れなどから虐待に発展するケースが後を絶たない中、適切な介護者支援が欠かせない。

 京都市西京区の中島良明さん(70)は認知症の妻(70)を自宅で介護する。料理ができていなかったり、電話で話した内容を忘れるなど妻に症状が出始めたころ。健康だった妻の姿が重なり、思わず怒鳴り、ほおをぶった。男1人でスーパーで買い物することに抵抗感を覚え、人に会うのもおっくうになっていた。「介護する人の体も心も健康でないと共倒れする」

 同志社大の井上恒男教授(福祉政策論)は、京都府の乙訓2市1町で「要介護3」以上の人を在宅で介護する578人を調査した。回答者443人の約半数が「介護できなくなった時の代わりがいない」と答えた。他にも「自分の時間が取れない」(156人)、「夜間、緊急時に対応したサービスがない」(69人)など、介護者の切迫した状況が浮かび上がった。

 介護者支援法がある英国では、介護者は自治体に介護を継続できるか評価を求める権利があり、評価に応じて家事援助やカウンセリング、余暇活動などの支援を受ける。井上教授は「日本も心身の健康診断やレスパイト(休息)事業の重要性が高まっている」と話す。

 厚生労働省によると、特別養護老人ホームの入所申込者は全国で42万人(09年調べ)を超え、京滋では約1万3千人。昨年の社会保障審議会では、申込者のうち待機者は全国平均22・5%と示された。

 伏見区の男性(61)は、父の介護で休職し、東京から実家へ戻った。しかし、休職期間中に父が入所できる施設が見つからず、職場復帰をあきらめた。32カ所申し込み、2年待って入所した施設は検査ばかりで父が弱り、9日間で退所した。施設と要介護者のミスマッチだった。

 毎年増える高齢者虐待も深刻だ。未婚の子どもとの同居世帯で最も多く、加害者の4割は息子で、構造的な問題も潜む。ひきこもりや精神的な障害のある子どもらの親が倒れると、介護者と要介護者が逆転する。自立できていない子どもは親に適切な介護ができず、ネグレクト(養育放棄)などにつながる可能性をはらむ。「介護者が抱える問題を探り、専門家が介入する必要がある」と京都市地域包括支援センター連絡協議会顧問の三浦ふたばさんは指摘する。

 昨年6月、子どもや高齢者などを無償で介護する家族らを「ケアラー」と位置づけて支援する全国組織「ケアラー連盟」が発足した。支える人と支えられる人がともに尊重される社会を目指し、NPO法人や大学教授らが介護者の実態調査や介護者支援法の成立に向けて動きだした。

 介護は、医療や就業、経済的問題などが複雑に絡み合う。「介護の社会化」を実現するためにも、介護者のニーズに的確に応えられる包括的な支援体制を整える必要がある。介護のために家族が人生を犠牲にし、孤立してしまう社会であってはならない。

[京都新聞 2011年2月2日掲載]

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