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高年齢化する「ひきこもり」 包括的な支援構築急げ

社会報道部・吉永周平
ひきこもりの問題に取り組むため京都市で立ち上がったNPOのスタッフたち。高年齢化する当事者への新たな支援策を模索している(京都市左京区・「若者と家族のライフプランを考える会」事務所)

 自宅から出ずに社会との関係を断ったり、コンビニなどに行く時だけ外出する「ひきこもり」は全国に約70万人いるとされる。いま、その高年齢化が問題になっている。

 家族会連合会の調査では、当事者の平均年齢は32歳、父親の平均年齢は64歳に達した。ひきこもりは不登校をきっかけに始まる若年層の問題と理解されがちだが、実態は30代以上の当事者が数多くいる。今年7月に内閣府が公表した「ひきこもり支援者読本」も、高年齢化に多くのページを割いた。

 当事者に話を聞くと、多様な事情を抱えていることに驚かされる。30歳で家に閉じこもった男性は、大学時代に発症した強迫性障害と障害に対する周囲の無理解が端緒だった。断続的に約20年ひきこもっている39歳男性は、長期に及ぶ外界との関係断絶に雇用情勢の悪化が加わり、年を重ねるごとに就職が難しくなる悪循環に陥っていた。

 親のすねをかじって気楽に生きているような人に会うことはまずない。多くの人は成人後も親の支えで生きる葛藤に苦しんでいる。

 ひきこもりのきっかけには発達障害や高校中退、労働環境の悪化、職場の人間関係などがあり、複数の要因が複雑に絡み合うことで長期化することがここ数年の間に理解されるようになった。

 これまで、ひきこもりへの対応は親と支援者による取り組みが中心だった。公的支援が乏しく、長らく放置されたことで長期のひきこもりが生まれ、当事者の高年齢化に拍車が掛かった点も見過ごせない。

 私が最初にこの問題に接したのは、京都府京丹波町の入所施設が30代を含むひきこもりの成人や不登校の生徒らに暴力を加えていた事件の取材だった。この施設は「最終的に相談に来る施設」と宣伝していた。事件の底流にあるのは、SOSが届かずに孤立し、実態不明の施設に頼らざるをえないほど追いつめられた家族の姿だ。

 不登校の少年らへの体罰が社会問題化した「戸塚ヨットスクール事件」から30年がたったが、この間にも同種事件は繰り返されてきた。働かない大人、学校に行かない子どもは暴力で矯正すべきと考える人権無視が、今も社会に潜んでいるように思える。

 家に閉じこもる状態を脱して居場所やフリースペースに通うようになっても、積極的に社会に関わったり、仕事に就く段階に至るには時間がかかることを多くの支援者が指摘する。特に中年に近づくほど社会参加の意欲は下がるといわれる。しかし、当事者の大半は障害年金や生活保護の枠外にあり、親も年金生活に入っている。将来への不安は深刻だ。

 京都市では、ひきこもり支援で関係機関が連携するネットワークが立ち上がった。今夏には、支援者や社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーらが親の死後を見すえた生活設計を考えるNPOが誕生した。

 救いを求める人は私たちの身近にいる。行政と民間組織が役割を分担して、医療、福祉、心理、労働など多方面にまたがる支援を早急に構築しなければならない。

[京都新聞 2011年10月5日掲載]

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