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京の着物業界に新風 消費者目線で改革を

社会報道部 石田真由美
着物でまち歩きを楽しむ若者たち。日本一の着物のまちが新しい着物ファンの期待にどう応えるかが、試されている(2010年3月、京都市東山区)

 8月29日から4回にわたり、経済面の連載「新風〜着物のまち」で消費者、販売、生産の現場から今、京都の和装業界で起きている新しい動きを紹介した。取材を通じて着物産地、問屋のまちというだけでなく、着物を着て楽しみ、着物を買いに行く場所として消費者が京都に大きな期待を寄せていると感じた。だが、京都の業界が期待に応えていくには課題がありそうだ

 初回に京都観光を着物で楽しむ人を取り上げた。数千円程度の手頃な料金の着物レンタル店が相次ぎ登場し、着物を持っていない人、自分で着られない人でも気軽に楽しめるようになった。着物を着る機会を増やした功績は大きいが、京都で着物を「着る人」が着物を「買う人」とは限らない。「着物の方がより京都らしい雰囲気を味わえる」(東京都の50代主婦)というように社寺や祭り、京料理など、あくまで京都観光をより楽しむ衣装ととらえている。「着たい」だけで、必ずしも「ほしい」のではない。

 実際に着物を買っている人は誰か。多くが仕事や習い事で必要な人、もしくは本当に好きな愛好家だ。連載は、地方の呉服店減少から着物ファンが全国から京都に買いに来ている現状も紹介した。着物へのこだわり、思い入れが強い愛好家の「京都なら何かいいものがあるはず」との期待に応えられているだろうか。

 京都の染色業界でここ数年、インクジェット染色が伸びていることも紹介した。業界では「価格破壊だ」という声が多いが、むしろ「インクジェット」の表示がほとんどないまま京友禅の着物として出回っていることの方が、消費者には問題ではないだろうか。説明責任を果たし、消費者が選べるようにすべきだ。その点で手描き友禅や丹後ちりめんなどの生産者が消費者向けに展示販売する取り組みは、高い技術、品質と魅力を直接広める場になろう。

 和装業界はこれまで簡単に着られる二部式を開発したり、タレントを起用したブランド着物や低価格品で着物の復権に取り組んできたが、市場縮小に歯止めはかからなかった。変化する消費者の心理やニーズを的確にとらえていたのだろうか。着物が生活必需品でなくなった今、他人に着せてもらうなら簡単に着られる着物でなくていい。不要なものはどんなに安くても買わないが、本当に欲しいものなら高くても買うという消費スタイルが定着する中、自分が気に入ったものや価値のある着物なら高くても買うという着物ファンは多いはずだ。

 今、誰がどこで、どんな時に、何のために着物を着ているのか。それにふさわしい着物とは、どういう仕様、色柄、価格なのか。作り方、流通方法、売り方、表示の仕方はどうあるべきか。消費者目線でいま一度業界あげて考え、日本一の着物のまちの京都の底力を見せてほしい。

[京都新聞 2012年9月12日掲載]

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