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伏見のまちづくり会社解散 「遺産」引き継ぎに期待

地域報道部 逸見祐介
酒蔵などが立ち並ぶ景色の中を進む十石船。運行は「伏見夢工房」からNPO法人「伏見観光協会」に引き継がれた(京都市伏見区)

 京都市などが出資し伏見区の観光と商業の振興を目指して設立した、TMO(まちづくり機関)の株式会社「伏見夢工房」が今年6月末で解散した。市内で初めて中心市街地活性化法(中活法)の適用を受けて2002年にスタート。基本計画に示した45事業のうち39事業に着手して一定の成果を上げた。ただ、今後も伏見のまちづくりのリーダーとして活躍が期待できただけに解散は残念でならない。

 これまで、夢工房は基本計画の主な事業として、酒蔵が立ち並ぶ通りのライトアップや万灯流しなど新規事業を打ち出し、地域活性化の一翼を担ってきた。

 一方で、「まちづくりが目的で収支は同程度でよい」との共通認識があったという。メンバー全員が本業を持ち、夢工房の仕事を任せる専従スタッフも置けなかった。収益を新たな事業に生かす仕組みを確立できず、自立経営体になれなかった。

 経済産業省によると、1998年施行の中活法で活性化の基本計画を策定した地域は全国で約700あり、各地でTMOが立ち上がった。しかし、民間主導のまちづくりにならないなど、思うような成果を上げられなかった。

 このため、国は06年に法改正に踏み切った。自治体が新たに基本計画を提出、国が計画内容を精査して認定する。TMOなどに代わる推進組織の「中心市街地活性化協議会」も設けるなど、手続きは煩雑になったが、「選択と集中」の考えの下に支援は旧法よりも手厚くなった。

 京都市でも改正法の施行前に夢工房の関係者らで見直しの場を設けたが、「基本計画は予定通り進んでおり、新たに計画を練り直してまで助成を得る必要がなかった」(商業振興課)。これを機に夢工房は旧法下で得た国の支援を受けられる機会を失った。

 福知山まちづくり会社のタウンマネジャーも務める高田昇立命館大特任教授(都市計画)は「TMOの成功には公的支援と周囲に影響をもたらす事業が必要。この2点を通して自立経営体に成長することで本来のまちづくりの役割が果たせる」と説く。「従来のTMOのままでも地域活性化はできる」と前置きした上で、夢工房の選択では「効果的なチャンスに乗れなかったことは確か」とみる。

 伏見地域は、大河ドラマ「龍馬伝」放映で観光客が増加した年もあり、夢工房は出資を受けた56団体に出資金を満額返還して活動に終止符を打った。市も地域住民も設立当初の熱意を持続できず、基本計画の先のまちを描く機運が高まらなかったのではないだろうか。

 ただ、10年間の活動は商店街同士のつながりを生んだ。多くの事業は地元商店街やNPO法人「伏見観光協会」などに引き継がれるという。夢工房の「遺産」を次代のまちづくりにどのように生かしていくのか、注目したい。

[京都新聞 2012年9月19日掲載]

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