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近江八幡市の「おやじ連」 第二の人生に役割と仲間

滋賀北部総局 江夏順平
市の講座の同期が集まって10年以上続けている「おやじ連」の料理教室(近江八幡市土田町・ひまわり館)
市の講座の同期が集まって10年以上続けている「おやじ連」の料理教室(近江八幡市土田町・ひまわり館)

 京阪神のベッドタウンの一つ、近江八幡市で定年退職した男性がボランティアや趣味のグループを結成し「おやじ連」の総称で活発に活動している。26団体、参加者約350人は滋賀県内でも有数の規模で、他府県からの視察も多い。日頃から「おやじ連」の活動を取材し、活況の理由を探る中で行き着いたのは、当たり前のようだが「役割」と「仲間」だ。

 近江八幡市は1956年に東海道線米原−京都間が電化されたのを契機にベッドタウン化が始まり、1970年代にかけて団塊世代を中心に新住民が数多く転入してきた。

 団塊世代の定年退職に合わせ、介護予防の観点から地域と接点のない男性の居場所をつくろうと、市は2002年に料理教室を始めた。この料理教室が起点となり、同期の集まりが「おやじ連」のグループへ発展した。

 「朝起きても行くところがない。今日一日何をして過ごすか、毎日考えるのが苦痛だった」。「おやじ連」代表の高橋作榮さん(71)は千葉県出身で、仕事の都合で1970年から近江八幡市の新興住宅地で暮らし、2003年に定年を迎えた。

 好きなだけできると楽しみにしていたゴルフは3カ月と持たなかった。地域に知人はなく、周囲の目が気になり1人で散歩もできない。市が開催する歴史や健康づくりの講座に手当たり次第参加するうちに出会ったのが料理教室だった。教室で同じ境遇の参加者同士が意気投合し、現在に至る仲間ができた。「何をするにも1人はつらい」。高橋さんはしみじみと話す。

 退職前の肩書は関係なく、役割分担はしても上下関係がないのが「おやじ連」の基本で、活動を持続させる秘けつだ。山の手入れや川や湖畔の清掃、登山、料理など活動は多彩で、一部のグループは結成10年を超え、地域に欠かせない存在となりつつある。

 料理教室を開催した市は、当初から教室修了後の活動まで見据えていた。役割分担が必要な料理は参加者が仲間をつくる手段だ。教室修了者には地域の課題や社会問題について情報を提供し、教室の仲間によるグループ結成や次の活動への移行を支援した。

 料理教室の立ち上げに関わった同市福祉子ども部の岩越和子次長は「地域や組織の中で役割を持ち、働き続けることが一番の介護予防になる」と強調する。人口減少が進み行政サービスの維持が難しくなる今後は、地域を支える戦力としても期待される。

 「おやじ連」は当初のメンバーが高齢化し、体力に合わせた次の活動を考える時期に来ている。また、定年延長や夫婦共働きなど、働き方や家族の形は多様化した。それでも、地縁も血縁もないベッドタウンで第二の人生にとって「役割」と「仲間」が充実の鍵であることに変わりはないだろう。

[京都新聞 2015年6月3日掲載]

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