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「流れ橋」復旧へ 「茶の風景」と合わせ発信を

京田辺・学研総局 山木秀二
流失したままの状態が続く「流れ橋」。復旧後、新たな活用策と情報発信が問われている(八幡市上津屋)
流失したままの状態が続く「流れ橋」。復旧後、新たな活用策と情報発信が問われている(八幡市上津屋)

 昨年8月の台風11号による増水で流失した八幡市と京都府久御山町を結ぶ通称「流れ橋」(上津屋橋)について、府が従来の木造主体のデザインを踏襲した復旧方針を決めた。11月ごろに着工し、本年度内の完成を目指す。4億円強の税金をつぎ込んでの復旧だけに、今後、府と地元自治体による情報発信や観光資産としての活用がこれまで以上に求められる。

 流れ橋は全長356・5メートルの木造橋で、1953年に府道として架設された。橋板がワイヤでつながれるなど、あらかじめ増水時に流れるように設計されている。復旧しやすい構造だが、流れるたびに多額の税金が必要になる。豪雨の影響で、2011年から4年連続で流失している。さらに近年、下流約500メートルに歩行者の迂回(うかい)路が設置されたため交通手段としての役割は小さくなっている。

 一方で、木造の風情ある姿が人気を呼び、時代劇のドラマや映画のロケでも使われてきた。地元・八幡市は橋を含めた周辺の観光拠点として近くに「やわた流れ橋交流プラザ四季彩館」を設けている。

 府は昨夏の流失後、橋の存廃を問い直し、構造を抜本的に見直す検討委員会を9月に立ち上げた。ほぼ同時に八幡市では市職員中心に橋の維持に向けた署名活動が始まった。検討委は11月、流失を抑制する工夫をした上で木造のまま復旧する方針を決めた。

 八幡市は橋を「重要な観光資産」と位置付けるが、市や市観光協会のホームページ(HP)には流れ橋について詳細な説明はない。府、久御山町も同様だ。説明の中に「映画などの撮影に利用される」とあるが、どんな映画やテレビ番組のロケが行われたかは紹介されていない。

 民間のHPでは「水戸黄門」や「暴れん坊将軍」「桃太郎侍」など400以上の作品が挙げられているが、四季彩館ロビーにそのHPの内容を印刷したパネルが置かれているだけで市などの積極的な情報発信は見られない。ロケ自体も減り、東映京都撮影所(京都市右京区)によると「近年は数えるほど。時代劇全盛期だった1960〜70年代と比較すると、50分の1以下だろう」という。

 地元住民や観光客を巻き込んで署名活動を進めた八幡市や、それを「地元の意向」と重視して復旧方針を決めた府は今後、これまで以上に流れ橋を観光・文化的資産として情報発信、活用していくことが求められる。

 新たな価値を見いだす必要もある。流れ橋周辺には茶畑が広がり、橋を含むその景観は今年1月、「府景観資産」に登録された。さらに4月には宇治茶の歴史・文化の構成要素として文化庁創設の日本遺産に認定された。流れ橋の文化的価値を高めるチャンスといえる。府や市は新たな活用策を打ち出し、発信していくべきではないだろうか。

[京都新聞 2015年7月8日掲載]

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