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自主避難者住宅、無償終了へ 望まぬ帰郷、迫られる恐れ

報道部 後藤創平
自主避難者のためにNPO法人が主催した説明会。若松復興副大臣は「いつまでも避難はできない。どこかに定住が必要。国としてどう支援できるか考える」と述べた(昨年12月6日、京都市下京区)
自主避難者のためにNPO法人が主催した説明会。若松復興副大臣は「いつまでも避難はできない。どこかに定住が必要。国としてどう支援できるか考える」と述べた(昨年12月6日、京都市下京区)

 東京電力福島第1原発事故で全国に自主避難した人への住宅の無償提供が、事故発生から6年となる2017年3月で終了する。京都の公営住宅で暮らす自主避難者も順次、新たな住まいの確保を求められる。引き続き今の公営住宅に住み続けられる保障はなく、放射能への不安を抱えたまま「望まない帰郷」を迫られる可能性がある。

 福島県は昨年12月、住宅の無償提供の打ち切りを踏まえ、県内外の自主避難者に対する「帰還・生活再建に向けた総合的な支援策」を公表した。無償期間終了後の施策として、▽避難元への移転費用の補助▽民間賃貸住宅の家賃補助▽公営住宅の確保に向けた支援−などを掲げた。

 多くの自主避難者はこれらの施策に対し、「帰還ありきだ」と反発している。

 福島県の担当者は「福島に帰ることを強制しているわけではない。県外に住む人への補助もある」と説明する。確かに、民間賃貸住宅の家賃補助では県外の世帯も対象にしたり、各自治体に公営住宅へ優先入居できるよう要請したりしている。ただいずれも条件や期間がある。支援策を総合的に見ると、帰還ありきと受け取られても仕方がない。

 京都府内の公営住宅で暮らす避難者は約400人いる。府と市は、独自に「入居から最大6年」としている無償期間後について、優先入居制度の利用を提案している。公営住宅で通常の一般募集とは別に、特別の事情がある人を対象に公募を行う制度だ。

 優先入居にあたっては、収入や住宅困窮要件などの審査が必要になる。公募に申し込んでも、抽選に外れれば、今の公営住宅から退去せざるを得ない。募集は住宅の空き状況を踏まえた上で実施され、府は「提供できる住宅や戸数には限りがある」という。

 自主避難者の多くは、夫を残した母子避難のため、二重生活の負担がのしかかる。夫に収入があり、元の住居には損壊がないため、住宅困窮要件を満たすことは難しい。

 東日本大震災からもうすぐ5年を迎えるが、原発事故は収束していない。福島県内では依然として、放射線量が平常値より高い地域がある。たとえ低線量であっても、子どもの体にどのような影響を及ぼすか心配する親の気持ちは尊重しなければならない。

 子ども・被災者支援法は、被災者が避難と帰還のどちらを選択した場合でも、適切に支援しなければならないとしている。避難先の住居も保障されて当然だ。

 昨年12月、若松謙維復興副大臣や福島県の担当者、京都の自主避難者が参加した「支援情報説明会・交流会」が京都市内で開かれた。福島市から伏見区へ母子避難している女性の主張が忘れられない。「無償提供が打ち切られ、今の住宅には抽選をしなければ住み続けられない。これって支援なんでしょうか」

[京都新聞 2016年1月27日掲載]

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