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「ももクロ」でまちおこし 知名度向上どう生かす

滋賀北部総局 森田明理
全国から集まった来場者でにぎわうライブ会場(4月21日、東近江市芝原町・布引運動公園)
全国から集まった来場者でにぎわうライブ会場(4月21日、東近江市芝原町・布引運動公園)

 滋賀県の湖東地域に位置する東近江市。人気アイドルグループ「ももいろクローバーZ」の野外ライブが4月21、22両日に行われ、緑豊かで静かな街が一躍注目を集めた。ライブ開催から約5カ月がたった現在も、市内各地に再び足を運ぶファンが後を絶たない。このにぎわいを一過性のイベントで終わらせないためにはどうするべきか。市や地元住民の模索が続いている。

 「市内外への大きなPRになる。来場者による飲食や宿泊など、経済効果も期待できる」。昨年12月25日、市の記者会見でライブ開催地に決まったことが発表された。来場者見込みは、2日間で約3万人。担当記者として、市側の楽観的な予測をうのみにはできなかった。市内には宿泊施設や会場付近には飲食店が少ない。会場までの交通手段も限られる。「混乱するんじゃないか」「市民には関係ないイベントだ」など、市民の冷めた声も聞こえた。

 しかし、結果は大成功。懸念された来場者の輸送にも大きなト ラブルは発生せず、計3万2500人のファンが、同市芝原町の布引運動公園陸上競技場で、青空の下でのライブに酔いしれた。ライブの冒頭、ステージ上の大画面で流れた映像には太郎坊宮(同市小脇町)が登場。ももいろクローバーのメンバーは、トーク中に何度も市の魅力をPRした。ライブ終了後、ツイッター上では「東近江市、ありがとう」と開催地の市に感謝するファンのコメントがあふれた。

 ライブ開催以降も「聖地巡礼」と称して、市を訪れるファンが今も続いている。聖地は計5カ所。映像で登場した太郎坊宮や、メンバーが事前にライブのPR活動で足を運んだ酒かすチーズケーキ店「工房しゅしゅ」(同市上羽田町)など、ファンの間でSNSを通じて広がったようだ。

 成功の裏には、どんな秘密があるのか。取材を通じて、次の2点が大きな理由ではないかと考えた。

 まず、市が入念な事前準備を行っていたことが挙げられる。開催地の公募に市が立候補したのは昨年5月。名乗りを上げた狙いについて、市は「東近江市の知名度を高めるため」と説明する。市町村合併後に誕生した「東近江市」の名前は、まだ全国に浸透していない。人気アイドルグループの力を借りて市の知名度を一気に高めようと、市は庁内10課を横断するプロジェクトを結成して準備に取り組んだ。

 開催決定直後から、会場周辺の自治会を回って住民に理解を求め、シャトルバスを利用した輸送手段を整備。地元住人への説明の徹底が、大規模な混乱を避けることができた要因だろう。

 また、インターネットやSNSの積極的な活用も大きな貢献を果たしたと言える。開催決定直後、市はツイッターを初めて開設し、ファンに向けて積極的に情報発信を行った。終了後には、市のホームページ上でファンと住民への感謝を表明し、SNS上で話題となった。新しい手法を積極的に取り入れたことが、市の知名度と好感度上昇につながった。

 市は「この経験を基にまちづくりを進めていく」と強調するが、この勢いを継続できるのか、心配する市民の声も聞こえてくる。高まった知名度を存分に生かした市の取り組みに期待したい。

[京都新聞 2018年9月12日掲載]

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