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「京都ダルク」移転 施設側と地元住民、溝深く

報道部 三皷慎太郎
移転に向けた工事が進む京都ダルクのグループホーム建設予定地(京都市伏見区向島中之町)
移転に向けた工事が進む京都ダルクのグループホーム建設予定地(京都市伏見区向島中之町)

 NPO法人「京都ダルク」(京都市伏見区)が運営する薬物依存症者のグループホームの移転を巡り、向島地域で起こっている地元住民による反対運動を春から取材している。互いの立場や価値観を認め合う社会が実現してほしいと願いつつ、これまでの過程を見る限り、計画の進め方などについて両者に横たわる溝に重い現実をかみしめている。

 京都ダルクは、施設の老朽化を契機に移転を検討し、昨年末に条件に合う物件を向島中之町に見つけた。1月、地元自治連合会会長に説明を試みようとしたが、「話を聞く気はない」と面会を拒まれてしまう。この対応で「手詰まりになった」(太田実男施設長)と受け止め、移転の手続きを進めた。その後に一度も住民側と接触を持たないまま、2月に物件を購入。工事が迫った4月中旬になってようやく近隣住民へ移転計画の説明文を配布した。

 これに対し、「寝耳に水だ」と住民が反発。「リハビリ施設(ダルク)建設断固反対」などと書かれたビラが至る場所に貼られるようになった。5月と7月、9月上旬に地元主催でダルク側も参加した住民説明会が開かれたが、「事前の説明などが十分になされなかった」「地域住民の意思を無視して一方的に進められた」などの声が住民から上がっている。7月下旬には1万4千人の署名を添えた建設反対文書が京都市に提出された。

 「どこで作ろうとしても必ず反対される。悲しいかなこれが日本の現状なんです」。太田施設長の言葉に社会の理解が進まない厳しい現実を思う。2016年施行の障害者差別解消法の付帯決議では、障害者関連施設の認可などに周辺住民の同意は必要ないと盛り込まれた。ダルクの手続きに法的な不備はないといえる。ただ、ダルクの進め方に反発を生んだ側面もあると取材しながら私は感じる。

 過去に地元で発生した刑事事件との関連から薬物依存症に対する不安を口にする地元住民は決して少なくない。住民有志でつくる「向島ダルク対策委員会」副委員長の冨田敏充さん(45)は「地域への入り方がまずかったと思うし、説明して理解を得ようとする姿勢が感じられない。どんな団体か分からず、不安に感じる住民の立場にもなって考えてほしい」と訴える。

 地域の理解と協力があってこそ、社会復帰を支援する施設は役割を果たすことができる。それを踏まえて進めることで良好な関係が築けるのではないか。向島で生じたことは、どの地域で起きても不思議ではない。

 現在は詳しい経過や質疑応答が書かれた資料を元に行政も交えたミニ説明会が継続的に開かれている。両者の距離が少しでも縮まり、よい着地点が見いだされることを願って取材していきたい。

[京都新聞 2018年9月19日掲載]

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