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宇治田原町の観光人気上昇 変わる町に期待と不安

京田辺・学研総局 広瀬聡子
田園風景の中で新名神高速道路の建設が進んでいる (宇治田原町禅定寺)
田園風景の中で新名神高速道路の建設が進んでいる (宇治田原町禅定寺)

 「ハートの窓」の写真のインターネットへの投稿が起爆剤となり、観光スポットとして宇治田原町の人気が急上昇した。新名神高速道路開通も5年後に控え、町は活性化の大チャンスと捉えている。町の変貌に住民は期待を抱くとともに、不安ものぞかせる。

 昨年夏、同町奥山田の正寿院にあるハート形の窓「猪目(いのめ)窓」の写真が写真共有アプリ「インスタグラム」に投稿され、ネットで「幸せを呼ぶ窓」として話題を呼んだ。正寿院の夏恒例の行事「風鈴まつり」も昨年の混雑から今年は予約制にしたが、6千人以上が訪れた。町は観光周遊バスを運行、町内の和菓子店やカフェなどのスイーツを紹介する観光マップも発行され、町は活気づいている。

 同町は地図で見ると形が「ハート」になっている。町は「ハート」のイメージを前面に押し出し、ハートにちなむ商品開発を補助するなど産業振興にもつなげようとしている。煎茶製法を開発・普及した永谷宗円の生誕地で、宇治茶の産地という伝統に、「ハート」というアピールポイントが加わった。

 2023年開通予定の新名神高速道路にも期待が集まっている。町内に宇治田原インターチェンジ(仮称)が設置予定で、宇治市や京田辺市からの路線バスが中心だったアクセスが大幅に改善される。

 西谷信夫町長は町の施策の3本柱に、幹線道路を整備する「みちづくり」、新庁舎を建設する「拠点づくり」、人口減少対策と移住・定住対策を推進する「未来づくり」を掲げる。交通の利便性向上は「未来づくり」も後押しすると期待する。「住んでよし訪れてよしの宇治田原」をスローガンに、観光振興も含めて施策を展開する構えだ。

 人の往来が増えれば、地域の姿も変わる。大きな転機を迎えた町の今後について、住民の思いはさまざまだ。ハートにちなんだ商品開発に取り組む企業からは「うちも観光スポットになるのでは」「若い人にもっと町に来てほしい」など、観光地化を歓迎する声が多い。一方で、町に移住してきた住民からは「町ののどかな風景、静かな空気が好き」「変わらないでほしい部分もある」という声も出ている。

 6月末、同町湯屋谷で旧茶工場を改装した交流拠点「宗円交遊庵やんたん」がオープンした。運営する近隣住民は「観光に来た人に私らが今の町のことを伝えて、私らもここに集まって昔を懐かしむ。今と昔を感じることができる場所」とほほ笑みながら語ってくれた。宇治田原町の良さを、住民と観光客が一緒に確かめている空間と感じた。

 宇治田原町を1年間取材して、町が持つ魅力やこれからの姿を決めるのは、住民一人一人の思いなのだと考えさせられた。町がどのように変わっていくのか、これからも見続けたい。

[京都新聞 2018年9月26日掲載]

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